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電通グループのデジタル領域3社が描く、DXの最前線(PR)

LINE経由の売上を47倍に!「銀のさら」が電通アイソバーと取り組んだ、価値の伝わるCX設計

 近年の企業と顧客のコミュニケーションにおいては、クーポンの配布などを通じた従来のプロモーションだけでなく、宣伝の枠を超えた顧客体験がますます重要視されている。ライドオンエクスプレスの宅配寿司ブランド「銀のさら」では、電通アイソバーの協力を得ながらLINEを通じた顧客体験価値の向上に取り組み、LINE公式アカウント経由の売上を他のチャネル以上に伸ばしたという。両社の担当者にその成長の背景と具体的な戦略について話を聞いた。

売上を軸としたLINE公式アカウント立ち上げ

――ライドオンエクスプレスの宅配寿司ブランド「銀のさら」では、2017年からLINE公式アカウントを運用されています。まずは、その取り組みの概要を教えてください。

永山:まず、LINE公式アカウントの運用方針として、「売上」を全体の軸としました。LINE経由での注文促進ですね。

ライドオンエクスプレス デジタルマーケティング部 マネージャー 永山覚氏

永山:具体的な日々の運用としては、「メッセージ配信」と「ユーザーの利便性向上」の両軸で施策を進めています。「メッセージ配信」では、クーポンの配信や新商品のお知らせはもちろん、「寿司のネタ替えができる」といった銀のさらが持つ強みも発信することでブランドイメージの向上に寄与しています。

 「ユーザーの利便性向上」については、LINEユーザーIDと「銀のさら」公式サイトの会員IDの連携を促進しています。ユーザーは「銀のさら」公式サイトへ自動ログインでき、スムーズな注文が可能です。またポイントや注文履歴の確認、予約注文のお届け通知など、注文体験の便利さをLINE上で実現しています。

立ち上げ前に決めるべきは「世界観」

――そもそもなぜLINE公式アカウントを立ち上げることになったのでしょうか? 背景を教えてください。

永山:当時「銀のさら」がWeb推進を始めた背景として、大きな理由は3つあります。

 まず1つ目は、店舗の人材が足りなくなったこと。人材不足の中、従来の電話による受注業務が店舗にとって工数の負担となっていたので、その解決策としてWeb注文による受注工数の削減を目指しました。

 2つ目は、販売促進チャネルを増やすためです。かつてはメニューのチラシを配布し、電話1本でお届けします、という販促が基本でした。そこにWebを使った注文窓口、つまり販売促進のチャネルを増やすことで、注文の機会を拡大したいという狙いです。

 3つ目は、利用者にとっての利便性を向上するとともに、「銀のさら」を利用する上での安心感をもっと醸成していきたい、という思いです。その手段としてもデジタル活用を考えていました。

 元々独自でメルマガ配信を行っているのですが、ユーザーとつながれる次のコミュニケーションツールを探していました。ユーザーが気軽に使えて、利便性や安心感を提供できるツールを探した時、候補に挙がったのがLINEだったというわけです。

――なるほど。そこから実際に開発・運用するにあたって、どのような経緯で電通アイソバーに相談されたのでしょうか。

永山:元々電通グループの方々とタッグを組んで、課題共有から分析・ブランディングを進めていました。そのため当時も、電通アイソバーさんには総合的に課題解決を依頼できるパートナーとして相談しました。

 LINE公式アカウントを立ち上げるとなると「どんなメッセージを送るか」という話になりがちですが、それ以前に、「銀のさら」としてどのような世界観で運用していくのかという話から相談できました。結果として、単にメッセージツールを導入する取り組みではなく、良質なコミュニケーションや注文体験の向上を実現していくための流れをパッケージとして提案いただき、本当にユーザーに対して良いものが提供できるなというワクワク感がありましたね。

売上につながる「情緒的価値」の発信

――先に体験全体の流れを考え、そこから施策として具体化されていったのですね。電通アイソバーでは、設計・施策をどのように検討したのでしょうか? 具体的な事例もあわせてお教えください。

荻野:まず、LINE公式アカウントを使ってどうカスタマーエクスペリエンスを構築するか、全体を考えました。

電通アイソバー ソーシャルエクスペリエンスデザイン部 シニアコミュニティデザイナー 荻野好美氏

荻野:売上向上というゴールに向け、サービスの認知から商品の選択、注文、食べてもらうまで、ユーザーの一連の行動・体験の中で有効な施策を実行することがミッションとなります。大きく「人の心を動かすこと」と「フリクションレスな体験」という2つの軸を設定しました。

 まず人の心を動かす、つまりユーザーのモチベーション向上という点では、日常の中で、元々「お寿司を食べたい方」はもちろん、「食べるつもりがない方」もなんとなくLINEを見たことをきっかけに、注文行動を起こしたくなるような機会を作ります。意識したことが2つあります。

 1つは、情緒的・感情的な価値を提供すること。「安い・うまい」などの機能価値訴求だけでは、ユーザーに飽きられてしまいます。そのため、それら以外の価値を感じていただくことが重要であり、これが競合他社との差別化にもつながります。

 具体的な例としては、父の日のメッセージ配信です。事前の調査で、多くのお父さんが家族とご飯を食べて過ごすことに価値を感じていることがわかりました。モノよりも家族との“時間”に幸せの価値を感じていたのです。

 そこでメインコピーに「父の日は家族と過ごそう。」という言葉を据え、クリエイティブとして家族と過ごす時間を彩るお父さんへのプラス一品やビールに合うサイドメニューの写真などを展開しました。ユーザーが「お父さんが喜びそう!」と感じる納得感のともなった情緒的な体験を、「銀のさら」というブランド全体から発信し成果につなげました。

父の日に実施したメッセージ配信のクリエイティブ
父の日に実施したメッセージ配信のクリエイティブ

荻野:モチベーション向上においてもう1つ意識しているのは、「ファスト&スロー」というダニエル・カーネマンが提唱する行動経済学における理論。これによると、脳に負担が少なく、直感的に理解しできる情報を伝えることで人は行動に移りやすいとされています。それはLINE公式アカウントにも当てはまり、たとえば年末年始には、お寿司の写真を大きく配置して「当日予約もOK」というコピーを添えたクリエイティブを展開し、売上が上がったというシンプルな事例もあります。

 以上のようにモチベーション向上の施策では、ユーザーへ情緒的価値も伝える一方、瞬時に理解できるクリエイティブを行動心理に基づいて設計することも意識しています。

永山:1~2秒で理解できるという点は、すごく意識して作られていると感じています。我々としては様々なコンテンツを載せたくなってしまいがちですが、そこを整理して提案いただいていますね。

ロイヤルティの高い顧客に向けた機能の充実

――次にフリクションレスの観点で実施された施策はどのようなものでしょうか。

荻野:ユーザーのモチベーションが高まり、「注文したい」という感情が生まれた際に、快適にゴールにたどり着くための体験を目指した取り組みです。大きく分けて2つがあります。

 1つは「リッチメニュー機能」の活用で、Web注文導線や商品メニューを定常設置しています。これにより「銀のさらを注文したい時、LINEを開けばすぐに注文できる」という体験を実現しています。売上全体で見ても、このリッチメニューから高い成果が出ています。

「銀のさら」LINE公式アカウントのリッチメニュー
「銀のさら」LINE公式アカウントのリッチメニュー。左はID未連携ユーザー向け、右はID連携済みユーザー向け

荻野:2つ目は、LINEユーザーIDと連携した会員向けに利便性の高い機能を設置したリッチメニューを用意していること。ID連携していないユーザーとは異なるメニューが表示されるようにしています。

 まず、リッチメニューから会員向けポイントプログラムの保有ポイントが確認できます。また、ブランドの強みである「ネタ替え(寿司ネタの入れ替え)」を日常的に利用している、ロイヤルティの高いユーザーが使いやすいように、注文履歴から同じネタ替えをすぐに引き出せる機能もあります。

 このようにリッチメニューでは、ロイヤルティが高いユーザーにはより注文しやすい体験を用意しています。何よりもベストなユーザー体験が作れるよう、日頃から永山さんや担当者の方とやり取りしていますね。

LINE経由の売上が約47倍に

――お話しいただいた施策によって、売上などの成果にどのような変化がありましたか?

永山:売上は、右肩上がりで伸び続けています。

 2017年の7月に立ち上げてから、最初の1ヵ月と直近2020年の7月の売上を比較するとLINE経由の売上は約47倍でした。現在もますます伸びています。

 最初の目的の1つであった販売促進についても、今は公式アプリでのプッシュ通知、メルマガともに、LINE公式アカウントでのメッセージも主力になっています。そのうち売上に最も寄与しているのがLINE公式アカウントです。比率としては、アプリプッシュを「1」とするとメルマガが「5」、LINE公式アカウントは「10」くらいですね。

 また、メルマガ登録・LINEアカウント連携・アプリ利用の3つが重なっている人の再注文率が最も高いため、今後はそうした顧客を増やしていきたいと思っています。現状それに寄与してくれているのも電通アイソバーさんと運用するLINE公式アカウントです。連携してくれているユーザーとコミュニケーションを取りながら、少しずつアプリ・メルマガにも送客していきたいです。

現状で満足せず、より幅広いCX設計へ

――ライドオンエクスプレスとして今後デジタル領域を強化するにあたり、電通アイソバーにどのようなことを期待しますか?

永山:2つありまして、1つはコミュニケーションの視点、日々の運用におけるセグメントメッセージの活用ですね。究極でいえばお客様が欲しいと思う内容を、欲しいと思うタイミングで提供する。そこに少しでも近づけていきたいですね。

 もう1つは体験価値を向上させるという視点。より広いカスタマーエクスペリエンス設計の実現です。現状はお客様にとって、検討から注文までの体験が便利で安心できるものになりました。今後はより価値のある体験を、お客様がお寿司を食べる時、食べた後へと広げていければと考えています。

――電通アイソバーでは、どのような展望を描いているでしょうか?

荻野:我々は「デジタルを創造的に使ってビジネスを変革する」ということをミッションとしていますが、顧客体験を設計する上でオンラインとオフラインの境目は切って考えていません。「銀のさら」の場合もまさにその考えを前提としており、注文体験はデジタルですが結局はオフラインで実際に食べていただく体験を想定して考えています。

 ブランドのポテンシャルと、カスタマーのリアルな視点を繋ぎ、体験を設計する。電通アイソバーでは、このようなカスタマーエクスペリエンスを設計し実現させるプロとして、今後も課題解決のお手伝いをしていきたいです。

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この記事の著者

Y.Kimura(Y.Kimura)

Webマーケター・ライター。企業のオウンドメディアでコンテンツ制作、広告運用を担当。またフリーライターとして、クラウドソーシングサイトを中心にIT・デジタルマーケティング領域に関する記事執筆活動を行っている。ジャズ、ソウルミュージック愛好家。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/03/01 10:00 https://markezine.jp/article/detail/35466