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BtoBマーケティングの開拓者たち

2021年版BtoBマーケティングの「健康診断」―施策編―

コミュニケーションコストをかけた集客〜“ゆるやかなつながり”を活かす

 次に広告費を使わず、SNSやウェビナーを使う集客について検討しましょう。今度はお金ではなく、コミュニケーションコストをかけて集客する考え方になります。

 まずSNSですが、直接サービス購入につながるリードを獲得するというより、サービスのファーストタッチとして考えます。たとえば、マーケット動向や業界知見が手に入るウェビナーへ集客して、そこからコミュニケーションを重ねて、購入タイミングを待つというのが基本導線です。次にウェビナーのリード特性として、短期ではコンバージョンしづらいという性質を理解しておく必要があります。ゆるやかなつながりなので、少し長い目で見てシナリオを設計しておくことが大事です。

 前々月号の連載で、自社ウェビナーで700名以上集客したとお伝えしましたが、この集客にも金銭的コストはかけていません。その代わりコミュニケーションコストをかけて、TwitterやFacebookから集客を生み出しました。特に昨今、Twitterにビジネスアカウントもたくさん入ってきていますので、うまく運用することでマーケティング活動にプラスの影響を与えられます。私のアカウントも運用して1年で1万人のフォロワー数に達しました。チャレンジする価値はあると思います。

 その他にも当社の場合はFacebookやnoteなどからの顧客化もかなり数があります。BtoBマーケティングといえども、お金をかけない代わりにコミュニケーションに工数をかけて取り組める施策もたくさんありますので、こういった流れにアンテナを張っておくことも大切です。

リード育成〜MAの放置状態を回避するために

 次にリードナーチャリングについて考えます。集客して集めたリードを、営業が商談をできるフェーズまで育てあげていく重要なフェーズです。なぜここが大事かというと、リードのフォローをやめると「8割が2年以内に競合に流れる」という恐ろしいデータがあるからですね。

 またBtoBとBtoCでは購入の意思決定の方法が違うことも大きく関係してきます。BtoCの場合は意思決定の単位は個人、もしくは家族という場合がほとんどです。よって購入を決めるまでのスピードは相対的に速くなりますね。一方でBtoBの場合は企業という集団が意思決定をします。社長、役員、担当部課長……複数人の稟議フローを通るため、購入を決めるまでに時間がかかります。リサーチ段階で集客できたリードに対して、長期に渡ってフォローを続けなければ、プロセスを攻略できないのです。こうした事情が、MAの急速普及につながっていきました。

 続いてMAの活用に関して、気をつけたほうがよい点をピックアップしていきます。まず、MAのシナリオを“作りこみすぎない”ことはとても大切です。「Webサイトにアクセスした」「問い合わせをくれた」など、特定のアクションにポイントをつけるリードスコアリングの設計も同様です。これらは仮説に仮説を積み上げて作っていくことになるため破綻することが多く、最初からやり直しというのも珍しくありません。このときに、「運用しながら変えていこう」という想定をもっていないと、「せっかくやったのに……」と、心が折れてしまうんですよね。こうなってしまうとMAが放置状態になるか、破綻していることはわかっているもののとりあえずそのまま運用するという「形式上回っているがまったく効果を上げない施策」になってしまいます。

 この破綻しやすさに対する現実的な解法としては、仮説の上に仮説を積み上げるのをやめて、一つひとつ仮説を確定して、その上にまた仮説を積み上げていく、“繰り返し”の概念を持つといいでしょう。たとえばポイントスコアリング。あれもこれも最初からポイント化しないで、まずはこのWebページにアクセスしてくれたら5点、この定義が信用できるようになった後に、お問い合わせをくれたらさらに10点。このような形で仮説を立証したら次のプロセスを足していく。臨機応変に形を変えること、少し長い目でゴールを目指すことがコツです。

インサイドセールス〜目的を見失っていないか?

 インサイドセールスで気をつけるべき点は、テレアポとの差別化をしようとし過ぎることで、そもそもの目的を見失ってしまうことです。具体的にはヒアリングに重きを置きすぎてしまうことには要注意。ヒアリングはかなりうまくやらないと、電話をかける側の都合が優先されてしまうのです。「あなたの課題とニーズを知って、私が助けになりたい」これがあるべきポジションだと思うのですが、スキルのない人がやると「あなたの課題とニーズで、リードデータを充実させるのが私の仕事なんです」という、電話を受ける側からするとメリットが何もない状況が生まれてしまいやすいのです。

 インサイドセールスのゴールはアポイントで問題ありません。ただしアポイントの内実を細かく設定するというのが大事で、件数だけを目標とするのではなく、たとえば「この業種、この役職以上の人、さらにこの課題が解決されていない人」といった“条件に該当するアポイント”をゴールとすべきです。つまりテレアポとインサイドセールスの違いは、ターゲット設定の細かさにあると考えるのです。そして、そのためにMAを使おうという発想になれば、施策同士が連動していきます。

 またインサイドセールスがやるべきことはヒアリングではなく、“当てにいくこと”だというのが私の考えです。課題を聞くというスタンスではなく、今入手できているデータから、あらかじめ課題の仮説を立てておく。そして思いつきで質問するのではなく、返ってくるであろう答えを想像しながら質問を「投げかける」のです。ヒアリングと比べるとスキルに左右されにくく、仮説さえしっかり立てることができれば、チームに横展開しやすいやり方だと思っています。

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リード管理〜「名寄せ」の仕組みを作る絶好のチャンス!

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この記事の著者

高井 伸(タカイ シン)

 起業家として2009年より活動。多くのプロダクトを立ち上げ、現在手がけるBtoB向けのクラウドサービス「サスケ」は導入企業を1,500社まで拡大。ジョイン当時からARRは40倍以上を計上。現在所属するインターパーク社へは2015年に自身も出資を実行し経営参画。経営のわかるマーケターとして大手企業やベンチャー企業を...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/03/01 06:30 https://markezine.jp/article/detail/35542

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