コロナ禍で加速するECシフト
※本記事は、2021年2月25日刊行の定期誌『MarkeZine』62号に掲載したものです。
株式会社イングリウッド 企業戦略室 サブマネージャー 松本慶大氏
2013年よりトレンダーズにてPRプランナーとしてリリース作成、外部調査、専門家インタビューを含めた情報源作成などを担当。2016年より人事に異動し、新卒採用責任者を担当。その後、人事マネージャーとして、採用、広報、研修、メンバーモチベーション管理、組織作りなどを行う。2020年よりイングリウッドにジョイン。新卒採用、広報、組織構築を担当。
国内のEC市場(BtoC)の規模は、2018年は17兆9,845億円(前年比8.96%増)、2019年は約19兆3,609億円(前年比7.65%増)と、以前から着実に拡大してきていました(※1)。そして、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、ECシフトの流れはさらに加速することとなりました。2020年4月には緊急事態宣言が発令され、「ステイホーム」を合い言葉として不要不急の外出を控える「巣ごもり」状態に。こうした社会および生活の変化の中、ネット上で物を買う消費者はより増加しました。大手カード会社が発表したコロナ影響下の消費行動レポート(※2)では、集計されたキャッシュレス決済すべての消費におけるECの決済金額比率は、2019年は平均20%弱でしたが、緊急事態宣言期間の2020年4〜5月は36%となっており、EC利用が急激に拡大していることがうかがえます。
日本国内の特に都心部ではリアル店舗へのアクセスが非常に良いこともあり、EC化は進みにくいと言われていましたが、withコロナ時代の生活様式に合わせて今後もECを頼りにする流れは続きそうです。小売業態がすべてオンラインに切り替わることは現実的ではありませんが、オフラインでの販売のみを生業にしていた事業者であっても、これを機にECへ舵を切るタイミングに来ているかもしれません。
効果的なEC運用に必要な3要素
では、ECをより効果的に運用していくためには、何から始めれば良いのでしょうか。私が所属するイングリウッドは、テクノロジーを活用したECに関する総合的なソリューション提供を軸に事業を展開しています。ここでは当社がECビジネスで培ってきたノウハウと蓄積されたデータを基に、3つのポイントについて、ケーススタディを交えながら解説します。
(1)何を売るか
「何を売るか」を考えるうえで重要となるのは、「情報収集・分析」と「事業計画」です。ケーススタディでは、ECで販売する商品を新しく開発する場合を想定してみます。
戦略を考える際には、市場・競合分析の基礎情報を元に「今から新規参入する上で、これだけはクリアしなければならない」という必須条件の洗い出しを行い、販売したい商品がそれらを満たしているかを確認します。以下のように項目分けをした「必須条件リスト」を準備するのもおすすめです。
(2)どこで売るか
「どこで売るか」を考えるうえで重要となるのは、「売り場の選定」と「売り場作り」です。
売り場選定や売り場作りでは比較的情報量が多いため、このタイミングでECコンサルティング会社への依頼を検討する場合もあります。ECコンサルティング会社にはそれぞれ得意分野があることが多く、ウェブ制作に強い会社、マーケティングに長けている会社、特定のモールに強い会社、越境ECの経験が豊富な会社など様々です。自社にとって何が必要か見極めて選定することが必要ですし、まったく見当がつかなければ、オールマイティに対応してくれる会社を選ぶことも一案でしょう。
(3)どう売るか
「どう売るか」を考えるうえで重要となるのは、「売るための仕組み」と「売れるための仕組み」です。「届ける仕組み」においては、フルフィルメント(※3)をどのように整えていくかが重要です。外部に依頼する場合に抑えておくべきポイントをアクションでまとめます。
ECでの新しい広告手法としては、少しでも掲載順位を上げるためにリスティングのCPC(クリック単価)を上げる、購入に直接的に繋がるアクションを増やすためにセール実施の早期化をする、EC会員限定価格企画の実施をする、モールの24時間限定ポイントアップをするなどの動きもみられます。クレンジングであれば、実際に使用しているシーンをライブコマースなどを用いて発信し、日々のクリック率やコンバージョン率などのPDCAを回し続ける必要があります。正解はないため、予算とにらめっこをしながらどれだけ多くの施策を素早く打てるかが勝負になります。