モバイル
モバイル端末の進化は目覚しい。インターネット的視点ではここ10年ほとんど変化しなかったPCと比べ、モバイルはユーザインタフェースの拡充や決済機能の付与、通信速度の向上など多くの進歩を成し遂げた。これらは広告メニューの多様化やリッチ化に寄与しただけでなく、インターネット広告に新たな可能性をもたらすなど、その存在感を大きくしてきている。「モバイルはマーケティングの進化・変化を占う重要な分野として注視しています」と永松氏が語るように、モバイルは今後のインターネット広告を左右する重要なポイントだ。
アクセス範囲の拡大「検索エンジン導入」
昨年よりキャリア各社が「Yahoo!」や「Google」などの検索エンジンの導入を開始した。従来は基本的に公式メニュー配下のサイトに限られていたユーザのアクセス範囲が、勝手サイト(注)やPCサイトにも広がった。ただし、「Yahoo!」「mixi」「モバゲータウン」以外の勝手サイトの収益構造が未だ確立していない点は今後の課題となっている。また、モバイル発展の原動力ともいえる未成年ユーザへのフィルタリング問題によって、ユーザのアクセス範囲が再び縮小する懸念も現れており動向に注目が必要だ。
携帯キャリア各社の公式メニューに登録されていないサイト。
ユーザ主体のメディア「CGM(Consumer Generated Media)」
インターネットなどを活用して消費者が内容を生成していくメディア。モバイルでは「モバゲータウン」「mixi」「GREE」などのユーザ参加型コミュニティが多くのPVを集めている。PCサイトでは圧倒的No.1ポータルである「Yahoo! JAPAN」もモバイルでは苦戦を強いられるなど、PCとモバイルでは勢力図の様相が大きく異なっている。

圧倒的なシェア「モバゲータウン」の成功
「モバゲータウン」は月間149億PV(07年12月現在)を誇るモバイルNo.1サイトに成長した。その原動力として昨年注目を浴びた広告ビジネスのキーワードが「モバゴールド」だ。広告をクリックすることによって得られる仮想通貨「モバゴールド」は、ユーザの分身である「アバター」の装飾アイテムを購入する際に利用する。「他のユーザよりも目立ちたい」という若年層の心理をうまく掴んだ仕組みは「高クリック率」「高コンバージョン」をもたらし、広告クライアントからの非常に高い評価を生んだ。モバイルで圧倒的なPVを獲得する同サイトは、従来の「ゲーム」「SNS」に加えて「EC・コンテンツ」「投稿系」「情報系」など各要素を充実させることにより「No.1ポータルサイト」への昇華を狙う事業戦略を描いている。

端末の機能を生かせ! 「ユーザインタフェースの進化」
モバイル端末に搭載されたさまざまなユーザインタフェースを、コンテンツや広告モデルに展開する例が増えてきている。「傾きセンサ」「加速度センサ」「タッチディスプレイ」など、直感的な反応を検知できるユーザインタフェースを利用した広告モデルの開発にも注目が集まっている。最近では「顔ちぇき」が好例だ。顔写真を送信するとユーザに似た芸能人を診断してくれるこのサービスでは、カメラ機能や画像認識エンジンが利用された。

「現実世界との連動」がマーケティングに変革を起こす
ユーザインタフェースの進化はマーケティング手法にも変革をもたらしている。おさいふケータイやGPSの登場によって、購買履歴や活動地域など現実世界におけるユーザ情報を取得することが可能になってきている。マーケティング活動はこれまで「リアル→リアル」「インターネット→インターネット」とそれぞれ分断された自己完結の世界であったが、今後は「リアル⇔インターネット」という形で相互の情報交換の上に、トータルな戦略を打ち立てる時代へ移行していくと考えられる。
