「強みを活かす」を指針として
今あるスキルを活かして、足りない領域を学ぶ機会を得る
コンサルティングからマーケティングに転身したこともあり、「左脳」と「右脳」どちらも使えるようになることを意識してきました。コンサルの基礎行動が身に付けば、分析、係数的な事業計画の策定、プロジェクトの管理などはこなせます。一方、右脳からのアプローチの経験は乏しかったため、周りにいた右脳優位の人たち、たとえば自分では思いつかないようなアイデアを出せるマーケター、感情で人を動かすことを得意とする営業の方などに張り付いて、彼らの仕事を手伝いながら考え方を学びました。よくやっていたのは、企画書作りのサポートです。「これはいける」と彼らが思うことについて「なぜそう信じるのか」を深掘りする機会を得られます。ロジックを補完する手伝いをしながら、右脳優位の人たちの思考プロセスを直に見て学ぶことができました。
今担当しているFacebookやInstagramのビジネス向けのマーケティングはBtoCのマーケティングと変わらず、人の心を動かすことが仕事です。アートとサイエンスを行ったり来たりする訓練は現在も心がけています。
「得意」だけでは強みとは言えない
成長の角度が落ちてしまわないように、仕事に慣れて力を抜いても回せていると感じ始めたら、新しい経験を求めるようにしています。コロナ禍を受けてInstagramのコマース機能もさらに進化が進んでいますし、データとプライバシーをめぐってアドテク業界の環境も変曲点を迎えようとしています。内外ともに日々変化に直面するFacebook社では、新たなチャレンジが数多く、毎日が貴重な経験です。
Facebook社には、強みが活かせるか、ということを軸に仕事を選択する、という独特なキャリア形成の思想があります。「強み」は「得意なこと」を意味せず、自分が情熱を注ぐことができて、力を最大限発揮できる領域のことです。反対に、得意なことでも、モチベーションを感じられないことであれば、継続的に実績を出し続けられないため、強みではないと教えられました。やりたいこと、自分にできると思えることに一生懸命取り組ませてもらえる環境に感謝しつつ、その延長で未知の成長機会に出会う旅路を楽しんでいます。

Facebook Japan マーケティングマネージャー 徳江朋美氏
野村総合研究所にて事業戦略コンサルティングを経験後、グラクソ・スミスクラインで医薬品マーケティングに従事。2017年からFacebook Japanでビジネスマーケティングを担当。
予算とお客様に向き合うことがマーケターを成長させる
「できることは何でも」のスタンスで
私はWebマーケティングの受託企業の創業経営者としてキャリアをスタートしたのですが、起業当時はまだ学生で、気合先行型だったこともあり、自社のマーケティングもお客様に提供するマーケティングサービスもひたすら実践の中で学びました。そのため、マーケターとしての腕を磨くというよりは、生き延びるためには是が非でも成果を出さなければならないという環境で、「事業を成長させるためにできることは何でもやる」というスタンスで仕事をしていました。今思えば、ずいぶんと遠回りで非効率な努力もたくさんしましたが、結果論でいうと良い経験だったと思います。
私は“予算(任されている予算で計画を達成する責任)”と“お客様”がマーケターを成長させると思っていますが、私自身も経営者としての経営責任と、相対するお客様に恵まれたおかげで、成長することができました。たとえば、初期のお客様で、当時爆発的に売れていた健康食品を販売する会社のマーケティング責任者がいらっしゃったのですが、そこで新規獲得コストとプロモーション予算の関係性や継続率の重要性を学んだことは、現在手掛けているSaaSマーケティングにも直結しています。
レバレッジを掛けて社会に恩返しする
これまでのキャリア(そして人生)を通じて人や機会にとても恵まれていて、今の私は周囲から与えてもらったもので形成されていると感じています。その恵まれた環境に自身の資質を掛け合わせることで、どうやって社会に還元できるか、最大限にレバレッジを掛けていかに世の中に恩返しできるか、というテーマを職業人として最も大切にしていて、そのテーマに即した職業選択をしてきました。
加えて、キャリアというのは不可逆的な作品という側面もあると思っているので、どこを切り取っても自身の美意識や価値観に沿って善きものであることを目指して、キャリアの選択をしてきましたし、これからもしたいと考えています。

freee 執行役員/SMB事業部長 川西康之氏
東京大学法学部在学中に起業。以来10年以上にわたってWebマーケティング会社、システム開発会社、総合型地域スポーツクラブなどの経営に携わり2016年より現職。趣味は将棋観戦。