SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

江端浩人氏に学ぶ、マーケティングとテクノロジー改革の最前線

「日本の起業家ランキング2021」1位に輝いたセーフィー佐渡島氏を直撃/クラウド録画サービスの可能性

最後に勝つのはアルゴリズムにデータを食べさせた人

江端:そもそも創業しようと考えた経緯は何だったのでしょうか?

佐渡島:元々私含め創業メンバー全員が、ソニーグループのモーションポートレート社という顔認識、画像処理の機械学習研究所のようなところにいました。私はマーケティング担当、森本、下崎はエンジニアとしてです。

 そこでは顔認証技術を、アプリやキャンペーンなどに活用できるエンジンとして提供していたのですが、AIが出始めた2010年頃から、コンピューターサイエンスが今後進化していくにあたって、1個1個のアルゴリズムを極めるのではなく、最後にアルゴリズムにデータを食べさせた人が勝つというのが明確にわかってきました。

 そんな頃、私が自宅を建て防犯カメラを導入しようとした際に、カメラ代や利用料金が高額なこと、外出先から映像を視聴できないなど、ニーズに合ったサービスが見つからない体験をしたことで、防犯カメラのクラウド化という発想が浮かびました。付けているだけで勝手に賢くなるものがつくれたら、消費者のニーズにも合うし、データも集まる。それで森本と下崎に声をかけ、アイデア実現のために動き出しました。

 はじめはモーションポートレートの事業として展開しようと考えていたのですが、「誰もが使えるオープンな世界を作りたい」と経営陣に相談したところ、ソニーの中にいると制約がメーカー側に落ちてしまうし、プロダクト完成までの実利的なスピードを考えても自分たちでやったほうが早いだろうとなったのが創業の経緯です。

人手不足の解消、マーケティング活用、人材育成にも活用される

江端:防犯以外の用途でも幅広く「Safie」が利用されるようになっているそうですね。

佐渡島:はい。実際の使われ方は色々で、建設会社や飲食店、小売、医療機関など幅広い業種で活用いただいています。店舗のディスプレイやレイアウトを遠隔で確認して即時対応するところもあれば、顔認証技術を利用して来店顧客を把握し、販促やマーケティングにつなげたり。省人化や人手不足の対策、熟練のスタッフのオペレーションを動画マニュアルとして人材育成に活用しているところもあります。

佐渡島:オペレーション改善に映像を活用されている企業も多いです。たとえば、一人焼肉専門店として話題の「焼肉ライク」さんでは、注文から3分以内にメニューの提供を行うことが魅力のひとつで、従来の焼肉店と比べて店の回転率かなり高いビジネスをしています。しかしながら、急速に店舗数を拡大しているため、オペレーションの統一が難しいという課題を持っていました。

 それに対し、全店舗にセーフィー対応カメラを導入いただき、各店の提供タイムを定期的に計測、3分を超えたケースを検証して改善につなげていきました。上手くいっているケースも共有します。わかりやすく正確な定評化ができているのがポイントです。

 大手ゼネコンの鹿島建設さんでは、建設現場にSafieを導入いただいています。これは同社が現在推進している、「すべてのプロセスをデジタルにして見える化」「管理の半分を遠隔に」「作業の半分はロボットに」をコアコンセプトにした生産改革につながるもの。顔認証で入退管理をし、ポケットカメラで現場巡回、クレーンカメラで現場全体を見て、システムともつなぎあわせました。

 各現場にカメラを配置し、これまで現場に赴いて確認していた安全管理や進捗管理、資機材管理の一部を遠隔で行えるようにすることで、現場での作業を減らし、生産性向上につなげられています。

 さらに新たな取り組みとして、Safieの映像をAPIでつなぎ、リアルタイムに現場内のモノと人の状況を遠隔で管理できるシステム、「3D K-Field」を開発し、活用を進められています。

江端:コロナ禍で遠隔ツールとしてのニーズも増えているのではないでしょうか。

佐渡島:コロナの最前線にも使われています。ダイヤモンド・プリンセス号でコロナに感染した重篤患者を受け入れた聖マリアンナ医科大学病院では、当時現場にカメラが入って患者の容態・バイタルチェックを遠隔からカメラの映像を通して観察するのに用いられました。

 製品としては、「非対面」や「非接触」の業務スタイルへの変革が求められるようになったことを追い風に、ウェアラブルカメラ「Safie Pocket2(セーフィー ポケット ツー)」の出荷数が伸びています。

 ライブ映像を見ながら現地スタッフとコミュニケーションが可能で、ガス会社や建設現場など、ほとんどの大手ゼネコンで導入されています。我々としては、「見えるデータ化(見える化+データ化)」に注力することで、あらゆる産業のDXをサポートしていけると思っています。

江端:デジタルへの置き換えを著書で「DX1.0」、それ以上を「DX2.0」と言っているのですが、まさにそんな感じですね。そうした幅広い活用は、最初から想定していたものですか?

次のページ
「エンジニアを市場に直結」することでスピーディーな体制が叶う

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
江端浩人氏に学ぶ、マーケティングとテクノロジー改革の最前線連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

江端 浩人(エバタ ヒロト)

iU大学教授、江端浩人事務所 代表、MAIDX LLC代表、AlMONDO事業顧問

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、日本コカ・コーラでマーケティングバイスプレジデント、日本マイクロソフト業務...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2021/05/07 08:00 https://markezine.jp/article/detail/35821

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング