サステナブルな消費行動に関する世代間ギャップの「なぜ」
白石:子供たちと話していた時に、学校で環境について学び「人間活動をしているだけで、地球が壊れてしまう」とショックを受けていた様子を目の当たりにし、私自身もショックを受けました。また、Z世代以降は授業の中で3R(リデュース、リユース、リサイクル)について当たり前のように学んだりしています。
一方、企業のマーケティング担当者は「SDGsに力を入れても、本当に購買に結びつくのだろうか」と半信半疑な方たちも多い印象です。確実にZ世代の意識や価値観は変わってきているにもかかわらず、企業側の意識との大きなギャップを感じます。
ESDの第一人者である阿部教授から見て、Z世代の社会貢献に対する価値観はどのように形成されてきたとお思いになりますか?
阿部:遡ると、日本の環境教育は1960年代から始まっており、実は長い歴史があります。当時の環境教育は、高度経済成長に伴う公害教育や、自然保護教育が中心でした。
その後様々な変遷を経て、国を上げてESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)に取り組むことを決めたのが、2002年の第57回国連総会です(参照)。このとき、2005年からの10年間を「ESDの10年」とする決議案を提出し、満場一致で採択されました
阿部:持続可能な開発のための教育に本腰を入れ始めたのがその2005年からです。Z世代以降の消費行動に関して言うと、注目すべきは、2012年の「消費者教育推進法」の成立です。従来の「守られる消費者」から「意志を持って、自分が使うものを選び取る」消費者へ変わろうという教育が始まりました。その同じ年に「環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律」も完全施行となり、持続可能な社会の担い手を育てる教育がより一層本格化したんです。
白石:今年23歳になる皆さんは、ESDが本格導入された2005年に小学校に入学されている方が多いかと思います。一貫して「持続可能な社会」に対する学びを受けてきたということですね。また、ESDに関しては2005年と2012年に、2回の大きな節目があったと。この2度の節目を経て、学生や子供たちの意識にどのような変化があったと感じていらっしゃいますか。
阿部:「保護される消費者」から「主体的な消費行動を通じて、社会の担い手になる」という風に大きく変わったように思いますね。
とくに大きく変化したのは家庭科の授業です。それまではクーリングオフの仕方や、困ったことがあったら国民生活センターに電話しなさい、といった教育が中心でしたが、2012年を境目に「消費者としての社会的責任」を教えるようになりました。
その中で、エシカル消費やフェアトレード、ファストファッションに潜む課題についても教えるようになりました。家庭科の授業で、「あなたの食べているチョコレートは、誰が、どこで、どのようにつくっているのか考えてみましょう」という時間をもうけるようになったのです。
こうして、Z世代の意識に「持続可能な社会をつくっていかなければならない」という価値観が自分ごととして徐々にインストールされていきました。