共通指標がなくなると、計測&最適化はどうやって行う?
ーーなるほど。各媒体が独自のモデルで広告配信をしていくと、共通項がなくなるため、なるべくKGIに近いところで比較できる方法もまた統計的なモデルで編み出さないといけない、ということになりますね。
羽片:そうですね。モデル化のポイントは、できるだけたくさん“正解のデータを食べさせる”こと。つまり売上に影響したときのデータを各媒体にどんどん返して、モデルの精度を上げていってもらうのです。その重要性を、クライアント企業には今かなり強くお伝えしています。
中村:また「横×横」を比較する統計モデルは構築に時間がかかるので、おのずと先に各媒体での効率最大化が命題になってきます。するとクリエイティブやメッセージをしっかり伝わるように見直すことになる。その上で「横×横」の比較をして統合的に広告配信を最適化するほうが、ただCPAを見て機械的に予算を動かすよりも本質的ではありますよね。
羽片:市場変化に合わせて、広告配信という投資をいかに早く正しく最適化するかは、事業成長に大きく影響します。最初に中村さんがおっしゃったように、これは本当に地殻変動と言える事態ですが、今までも大きな変化をチャンスと捉えて伸びてきた企業はたくさんありますので、我々も業界の各社と密に連携して、クライアント企業の事業成長に貢献できるよう努めているところです。
「VUCA 2.0」の精神でベストプラクティスを探る
ーー今回の件は、どうしても技術寄りの話が多くなり、キャッチアップが難しい側面もあります。マーケターに求められる行動・姿勢と、それをどのように後押ししていきたいか、お話しください。
羽片:おっしゃるように難しい部分があり、たとえば事業会社や代理店サイドのエンジニアとFacebook社など各媒体のエンジニア同士でないと話がスムーズに通らないこともあります。このことを踏まえ、当社では専門のエンジニアチームを設けており、技術面は丸ごと任せていただける体制を整えました(詳しくはこちらを参照)。
一方でマーケターは、先ほど中村さんが指摘された、各媒体の配信最適化と統合的な最適化という両方の仕事に向き合っていくことになると思います。当社では、マーケターとして押さえるべき点は極力わかりやすくご説明して、最適化のための技術面は専門チームでバックアップするという二段構えでサポートしていく考えです。
中村:この地殻変動に際し、今後も消費者により良い体験を提供していくためには、羽片さんが言われたように手を取って一緒に学んでいく体制が大事だと思っています。
「VUCAワールド」(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)という言葉がありますよね。先が見通せず、訳がわからない状態。今がまさにそうだと思いますが、そんな状態にどう対応すればいいのかを、すでに2017年にハーバード大学のビル・ジョージ教授が「VUCA 2.0」として提唱しています(参考記事)。
同じ頭文字でも各ワードが異なっていて、Vision:ビジョン、Understanding:理解、Courage:勇気、Adaptability:順応性なんですね。この考えには個人的にとても共感しています。我々も企業やエージェンシーと一緒に試行錯誤しながら、ベストプラクティスを探っていくつもりです。
ーーありがとうございました。後編では、コンバージョンAPI(CAPI)や自動アプリ広告(AAA)といったソリューションの詳細、実装にあたっての両社の支援についておうかがいします。