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“BOTANIST”を展開するI-neが実践!D2C事業者が押さえておくべきAmazon広告の活用法

 急成長するEC市場。複数あるチャネルの中で、特に存在感を示しているのがAmazonだ。ニールセンの調査によると、日本国内におけるAmazonの月間ユニークユーザーは5,200万人を超え(2020年4月時点)、膨大な顧客層に製品を訴求できる場として多くの事業者から注目を集めている。一方、事業者側には「多くの商品の中から、いかに自社製品を発見してもらうか」という課題も出てきている。そこで鍵を握るのが、Amazon広告の戦略的な運用だ。本稿では、ボタニカルライフスタイルブランド「BOTANIST」や美容家電ブランド「SALONIA」を展開する株式会社I-neが進めるAmazon広告戦略と、その戦略を支えるBarriz、サイバー・コミュニケーションズの取り組みから、D2C事業者が押さえておくべきAmazon広告の活用法を探る。

広告を起点に売上拡大を目指し、取引から顧客までハッピーの輪をつなぐ

MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、それぞれの事業のミッションと、Amazon広告運用における役割を教えてください。

小松:私たちI-neは、「商品を通じて世界中を幸せにする」というミッションの下、お客様や取引先、地域社会まですべての方々に幸せの連鎖を実現する「Chain of Happiness(以下、COH)」の実現を目指しています。以前、くせ毛に悩むユーザーさんから「I-ne商品を使ってから髪に自信が出て、学校に行くのが楽しくなった」とレビューをいただき、社員みんなで喜んだことがあるのですが、「こういう幸せを広げていきたい」と常々考え事業を展開しています。

 そうしたなかで、私が所属するECセールス部は、商品開発の着想から、最終的なお客様への流通まですべてを統括・実行するダイレクトマーケター部隊で、COHの輪を広げていく役割を担っています。

株式会社I-ne 販売本部 ECセールス部 部長 小松悠氏
株式会社I-ne 販売本部 ECセールス部 部長 小松悠氏

徳永:Barrizの徳永です。設立は2020年4月で、事業領域はD2Cに特化した広告代理事業になります。なかでも最も強みとしているのがAmazon広告になります。Amazon広告を起点とし、Amazon内での売上を最大化させるための販促支援を行っています。

 I-neさんとは会社設立前の2019年からのお付き合いとなり、役割としては全体ディレクション、並びにI-neさんとの打ち合わせや折衝などフロント業務を担当しています。

株式会社Barriz 代表取締役社長 徳永潤一氏
株式会社Barriz 代表取締役社長 徳永潤一氏

金子:CCIの金子です。私たちはBarrizと共にI-neさんのAmazon広告運用に携わっており、主には広告の設計コンサルティング、運用の担当として、広告という手段を通じ、販促・宣伝の両領域でのアカウント支援を行っております。

株式会社サイバー・コミュニケーションズ メディアソリューション・ディビジョン チーム・マネージャー 金子侑史氏
株式会社サイバー・コミュニケーションズ メディアソリューション・ディビジョン チーム・マネージャー 金子侑史氏

Amazonと楽天、デジタルチャネルそれぞれの特性と違いとは

MZ:I-neのECセールス部では、現在どのような販売チャネルを活用されているのでしょうか。

小松:Amazonや楽天などの「モール」と「自社EC」の2つを活用しています。弊社のECはモバイル通販としてスタートし、その後、楽天市場に出店し、BOTANISTやSALONIAの売上が大きく伸びました。ここ数年でAmazonがテレビCM等に積極的投資するようになったことも一因かと思うのですが、弊社の中でAmazonの売上が急激に成長しています。Amazonの市場の拡大とともに、BOTANISTならびにSALONIAの売上も比例するように伸びています。

 そこで、より効果を上げるため、Amazon広告の運用をCCIさんにお願いすることになりました。昨年(2020年)はCCIから徳永さんが独立してBarrizを立ち上げ、現在当社を含めて3社で運用に当たっているところです。

MZ:Amazonと楽天で、それぞれの特性や違いをどう捉えられていますか?

小松:簡単にいえば、楽天は店舗型で、Amazonはマーケットプレイス型になります。楽天では、私たちI-neの自社店舗(EC)である「&Habit」を出店しており、「&Habit楽天市場店」という場で、BOTANISTやSALONIAを含む当社のブランド製品を提供しています。

 これに対し、Amazonは店舗という概念ではなく、商品を登録していきます。見え方としては「市場に品物が並べてある」という感じで、お店で出店している概念ではありません。いろいろな商品がズラッと並んでいて、そこからチョイスする感覚です。

MZ:見せ方がまったく違うのですね。

小松:まったく違います。楽天の場合、「店舗としてどう見せていくのか」が課題ですが、Amazonでは「1つの商品、SKUをどう購入していただくのか」という点がポイントになります。

MZ:出店先としてのAmazonの強みはどのようにお考えですか?

小松:即日発送や土日配送に対応している点ですね。私たちは、購入の最終決定をするお客様のことを「ボス」と定義し、「ボス目線」で事業を考える風土があるのですが、そのボス目線でいうと、欲しいものをすぐに入手できる点、つまり「フルフィルメント分野」においてAmazonはとても強いと思います。

I-neが考える、Amazonで売上を上げる「運用の基本」

MZ:続いて、Amazon内の販売強化戦略施策について教えてください。

小松:クーポン施策や広告など様々な取り組みを進めていますが、重要なポイントは「タイミング」と「広告の面」ですね。たとえばクーポンといっても、常時出しているわけではなく、キャンペーン時や、Amazon Prime Dayやサイバーマンデーといった大型セールに合わせて、どう展開するかが鍵になります。実際大型セールの時に、いい面にしっかりと商品広告を載せていくことは、当たり前といえば当たり前なのですが、かなりタフな交渉が必要になります。なぜなら、いい面に載せると売上がそれこそ数倍変わるので。だからこそマスト事項として実施しています。

 またスポンサード広告も運用し、ターゲットに当てにいきますし、Amazon DSPも運用して、大型セールの時に実施するスポンサーシップ枠を買って一番いい面を取るなど、「基本だけど外せない」取り組みをしっかりと実施していきます。

MZ:外せないポイントをきちんと押さえておくことが重要なのですね。他にはどんな点を意識されていますか?

小松:まず前提として、当社ではROAS(Return On Advertising Spend)を意識した広告運用を心がけ、目標に沿って配信しています。そして配信については、現場間の週次のミーティングやレポーティングで実績を共有してチューニングをかけていきます。具体的な目標は、ブランドの戦略によって様々なので、その戦略に合致する目標に対してチューニングをかける感じですね。

 たとえばある製品ブランドで、実店舗とオンラインと同時発売する場合、実店舗での配架が始まるタイミングで、ECの方では「新規で1万件トライアルを取る」という目標を立てたとします。その場合、ROASといっても「コスト効率を良くする」のではなく、「多少悪化しても新規件数を取っていく」といった形で配信手法を変えるなど、かなり柔軟に対応しています。

 具体例を挙げると、クレイ成分を配合したヘアケアブランド「DROAS」では、配架が広がっている時に、「シャンプー」「ヘアケア」を調べているユーザーに対し、あらゆる面で商品を訴求する施策を展開しました。普通の時だと絶対に進めない施策ですが、ブランド全体で「それだけ新規が取れるから大丈夫」と判断したわけです。当然、ROASのなかでも、「新規獲得のコストの費用対効果」「既存顧客の購買の費用対効果」に分けて運用しています。

金子:アカウントをコンサルティング、運用する側からいうと、ROASという大きなゴールがI-ne様各ブランドで設定されている中で、各成果について、単なる費用対効果だけでなく、CVRやLTVなどを深く追求し管理していく点が、I-neさんの特徴かと考えております。

 I-neさんの要望に応えるために、我々CCIとしては、「設定されている成果指標をいかに深堀り、細分化していくか」「そして、それら指標に対する施策のPDCAをいかに速く回していくか」の2つが大きくポイントになると考えています。

金子:深堀りと細分化については、ブランドごとのROAS目標に基づき、購買ファネルにおける各段階でKPIを立て、それを広告指標に反映しきっちり回していくことが重要で、先ほど小松さんからの話に出た通り、これら指標に対して「基本的な施策を追求する」ことに尽きます。

 また、PDCAのサイクルスピードを上げた結果、Amazonの大型セール時期に広告効果を最大化させることで、売上向上に貢献しているという成果が出ています。たとえば2019年のサイバーマンデー時期には各ブランドの市場ポジションと課題を明確にし、BOTANISTの場合は「同じ市場に競合がたくさんいるなかで、消費者に確実に選ばれること」を意識して運用に当たりましたし、一方でSALONIAについては既に市場トップレベルの認知、売上を獲得していたので、「この優位なポジションをいかに維持し、競合にリプレイスの隙を与えないか」という別の視点でコミュニケーションを選択しました。チーム体制としては、フロントにBarriz、CCIでは運用基盤として設計コンサルティング、オペレーションにおけるスペシャリストを配置して日々運用をしています。

Amazon広告の運用で成果を上げるためにやるべきこと

MZ:ここからは、Amazon広告で効果を出すためのポイントをお伺いしたいと思います。D2C事業者がAmazon広告で売上を伸ばすために押さえておくべき点は何でしょうか?

徳永:一口にAmazon広告といっても、いろいろな種類、使い方があります。ポイントとしてはファネルに沿った設計を組むことが重要です。売上に直結しやすい広告メニューや認知拡大しやすい広告メニューがラインアップとしてあります。たとえば、ローンチして間もない商品であれば、商品認知をあげる為に認知拡大メニューをご検討された方がよいです。Amazon出店している企業様の最終目的は「売上最大化」が多いと思いますので、認知を拡大した先に売上がどう連動したかをモニタリング出来る設計が重要になってきます。

金子:クライアント様との連携頻度を高める体制作りと、そして中長期的な視点でブランドのゴールを捉えることも大切ですね。I-neさんのケースでは、それこそセールのタイミングは、日々数時間単位で進捗を共有し、広告効果や在庫の状況を管理する密な情報交換体制を築きながら運用しています。なお、2019年から従来とは異なるコミュニケーションツールも導入し、リアルタイムに情報共有しているので、先ほども話に出た迅速なPDCAを実現していると思います。

 中長期的な視点というのは、短絡的に目の前のROASに合わせるだけでなく、クライアント様の事業全体の中長期的な目的を把握し、施策を選択していきます。単発成果に終わらせるだけでなく、I-neさんの戦略に基づいて月ごとに、CCIが担う施策進捗の管理、振り返りを行い、フィードバックをいただいて、改めて課題の共有と施策提示をするコミュニケーションを取り組み開始時から継続しています。

MZ:元々I-neは自社内でデジタル広告やデジタルマーケティングを長年推進しており、知見やノウハウが蓄積されています。今回Amazon広告に当たり、CCIやBarrizへの協力を依頼した理由は何でしょうか。

小松:Amazonに来るユーザーは、そもそも購入意欲の高い方々であると考えます。そのためもちろん費用対効果が高いのですが、それをより効率的に実行するには、プロフェッショナルが必要だと考えました。先ほどのファネルの話もそうですが、CCIさんやBarrizさんがターゲットに確実に当てにいけるノウハウをお持ちだからこそ、高い成果が出せていると感じています。

D2C事業者支援サービス「Zenmai」を提供開始

MZ:今後、EC広告全般に関してに期待することを教えてください。

小松:効果測定の仕組みが、今以上に充実することを期待しています。今は社内にある実売データと照らし合わせて効果を深掘りしているのですが、自社サイトから販売チャネル別の効果測定が充実すると、非常に効率的に運用を進められ、すべての事業者がみんなハッピーになると思います。

 あとはライブコマースへの対応ですね。インフルエンサーの方経由で販売につながる場合、やはりそのインフルエンサーにもアフィリエイトできちんと対価をお支払いする仕組みを備えつつ、同時に私たちも、広告出稿でライブコマースとの相乗効果を図ることができれば、非常にありがたいと思います。

MZ:ライブコマースは中国や米国で伸びており、今後日本でも期待されていますね。ところで、BarrizさんはAmazonの成果を最大化するために、「Zenmai(ゼンマイ)」というソリューションをリリースされたそうですが、このZenmaiについても教えていただけますか?

徳永:これまで話に出ていたように、Amazonでできることは多岐にわたってあります。そして今後も確実にEC市場は伸びていくことが予想されていますので、これからD2C事業を始める方は、切っても切れない重要な基盤になると思うんです。そうしたD2C企業様に対して、Amazon出店~広告を起点とした集客施策までをトータルでサポートするのがZenmaiです。

 Zenmaiの提供サービス内には、国内で初導入したAmazon広告最適化サポートツール「Downstream」もご用意しております。テレビ番組に取り上げられることが予め把握出来ていれば、そのタイミングに合わせて入札強化が可能なDayparting(時間帯・曜日別入札調整)機能や定点観測しておきたいキーワードを事前設定しておくことで検索結果(1ページ目)におけるBrand占有率(byline単位)を確認できるShelf Intelligence機能も提供可能です。

 そこが私たちBarrizの強みなので、今実際にAmazon広告を運用していてなかなか成果が出ない方、さらにグロースを目指している方、そして新規にD2Cを始める方、それぞれのフェーズに沿った課題解決に貢献できると思います。

MZ:D2C事業者にとって非常に心強いソリューションだと思います。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/05/10 10:00 https://markezine.jp/article/detail/36015