過度な期待は誤った打ち手につながる
「コロナ禍をきっかけに、BtoBマーケティングを強化した」「今期こそBtoBマーケティングの強化に取り組みたい」という話をよく聞く。しかし、蓋を開けてみると、思ったような成果が出ない、リード数は増えているが商談や売上につながっていない、という企業も多いようだ。筆者は10年以上、BtoBマーケティングに関わっているが、「マーケティング」と言うと何やら高尚な雰囲気が出るためか、過度な期待や高すぎる理想を持ってしまい、それが誤った打ち手につながっているケースをたびたび目にする。本稿ではよくあるBtoBマーケティングの理想と現実を4つ挙げ、成果を出すために必要な現実的な考え方を解説していく。
よくあるBtoBマーケティングの理想
1. マーケティングを強化すれば、売上が上がる
2. オンラインマーケティングを強化すれば、営業はいらない
3. 他社事例を参考にすればヒントが得られる
4. マーケティング上手な会社になれば、顧客数が伸ばせる
1. マーケティングを強化すれば、売上が上がる?
【理想】BtoBマーケティングを強化すれば、売上が上がる
【現実】良いプロダクトを、良いプロモーションで広げることが重要。ダメなプロダクトは、プロモーションを強化しても売れない
はじめに取り上げるのは、BtoBマーケティング、特にプロモーションを強化すれば、売上や顧客数が増えると思ってしまうケースだ。Facebook広告やオウンドメディア運営、TV CMやタクシー広告などの大々的なプロモーション活動を行うことで、一気に売上が伸びるケースはもちろんある。しかし、前提としてプロダクト自体に価値があり、顧客に選んでもらえる理由が存在していることが必要だ。そうでなければ、マーケティングを強化しても売上は伸びない。
新規事業やスタートアップ領域に「PMF(Product Market Fit:顧客を満足させる製品(プロダクト、サービス)を提供し、それが適切な市場に受け入れられている状態のこと)」という言葉があるが、そもそも自社のプロダクトがPMFしていなければ、マーケティングを強化したところで売上は伸びない。そして、Market側のニーズは常に変わる。数年前はPMFしていたが、現時点ではPMFしていない、という状態もあり得る。
商談でプロダクトの説明をしたり、デモ体験などでプロダクトを見せたりしたとき、顧客が冷めた反応をしていないだろうか? 事業責任者や営業部長が営業活動をしたときに異常に低い受注率になっていないだろうか? その場合は、プロダクトそのものや販売するセグメントを見直す必要がある。「誰が顧客なのか」「顧客がプロダクトを選ぶに足る便益はなにか」を明確にした上で、プロモーションに予算を投下しよう。