優れた顧客体験の提供をビジネスの根幹に据えているか?
皆様はAdobe Summitに毎年テーマがあるのをご存知だろうか。最先端のDXツールを提供するAdobe Summitは、2016年から一貫して「体験ビジネス」というメインメッセージを発信し続けてきている。コロナ禍で顧客とのつながり方やビジネスのルールが変わってしまった今日。皆様はこのメッセージをどのように受け止めるだろうか。
「変わり映えのない、聴き慣れたメッセージだ」と思う方に自問してもらいたい。皆様はこのメッセージを自身が所属する組織で実現しているでしょうか? このメッセージの真意をもう少しわかりやすく解説すると、「優れた顧客体験の提供をビジネスの根幹に据えよう」ということだと筆者は考える。
このメッセージの意図は、ただ物を作って販売チャネルに供給することや、顧客に商品・サービスを提供するだけでは完結しない。なぜなら、このような活動は製造・販売活動にすぎず、顧客体験の設計を意味しないからだ。顧客とデジタルでつながり、提供する商品やサービスを通じて優れた購買体験や使用体験を設計・提供することが顧客体験だと捉えなくてはならない。このことを5年前から提唱しているのがAdobeであり、Adobe Summitなのだ。
世界中の企業によるCXへの意思表明
筆者は、オフラインカンファレンスが当たり前の時代から、オンライン開催が当たり前になったAdobe Summitの変化を見続けてきた。今年も400を超えるセッションのうち、わずか数十セッションを見ただけではあるが、それらから受けた印象は、まさに世界中の企業が抱いている「デジタルを活用しながら、優れた顧客体験をビジネスにしよう」という意思の強さと従来のビジネスに対する危機感、そして彼らの実行能力の高さである。
主なキーワードとして、「CX」や「オムニチャネル」はもちろんのこと、「パーソナライゼーション」「信頼(Trust)に基づく企業と顧客との関係性構築」「速度(Velocity)と成果が求められるデジタルマーケティングの戦略と実践」「顧客中心主義の実行と実現」そして「企業活動を通じた顧客との真のつながり方」などが挙げられる。
このようなミッションの実現に寄与するツールとして「Adobe Experience Manager(以下、AEM)」が存在し、EC・D2C・サブスクリプションビジネス領域においては「Magento Commerce」が進展・進化していることが今年のセッションから伝わってきた。
さらに、「Adobe Experience platform」「Customer Journey analysis」など、シームレスな顧客体験と顧客理解に不可欠なツールの充実も目覚ましい。また、業務効率の実現に寄与する「Adobe Sign」や「Adobe Workfront」の活用など、日本ではなかなか進まない組織内業務フローのデジタル化とシームレス化に関する事例も多かった。
これらのキーワードを実践するエクセレントカンパニーのお客様とつながり方、ツール活用の詳細事例は、本連載の別記事において弊社岩井、伴が解説してくれるので期待してほしい。今回の筆者からのレポートは少し広めの視点から、以下の3つのポイントを中心に構成している。
まずは「1)DX推進を全社レベルで行なっている最先端事例」の解説を行いたい。次に、「2)デジタル化を通じてお客様に提供したい顧客体験を形成するために必要な思考フレームワークをセッションの中から紹介する。最後に「3)コロナ禍で加速したDXがもたらす社会的価値とその武器化」ついて、著名人のセッションから得た知見を紹介したいと思う。