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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

イベントレポート

顧客の愛着を醸成しファーストパーティーデータを集めよ【「売り方」のオンラインシフト刊行記念イベント】

顧客がインプットしたくなる体験を仕込む

 ここで玉井氏は、同書でも取り上げられているスノーピークの事例を紹介した。もともと卸を通じて小売店で販売を行っていたスノーピークは、2000年に直販体制へと舵を切った。

「付き合いのあったところに仁義を立て、既存の販路を断つ決心は相当なものだと思います。一方で、消費者からすれば流通を介そうと直接メーカーから買おうと『商品が手元に届く』という意味では同じこと。1人ひとりの顧客にリーチしやすい直販体制に切り替え、パーパスに基づいた施策で消費者の愛着を醸成しながらファーストパーティーデータを集める同社の取り組みからは、学べることがたくさんあります」(玉井氏)

 これまでオフラインを主戦場にビジネスを展開してきた企業がデータ収集に本腰を入れて取り組む際、何から着手すれば良いのか。玉井氏は、コロナ禍を機に顧客側がオンライン上の手続きへ慣れ始めていることを好機と捉え、「顧客がインプットしたくなる仕組み作り」に取り組むべきだと話す。

「店舗を持っているなら、店頭にQRコードを設けるだけでデータ取得の入口が作れますし、オンラインの場合は商品が顧客の手元に届いた際に同様の仕掛けを取り入れることができますよね。ベタな手法としてはインセンティブを付けてデータの入力を促すことも可能ですが、ここは企業のクリエイティビティの見せ所だと思います。面白い体験が仕込めると、少しずつであってもデータは貯まってきます」(玉井氏)

顧客の愛着がデータ収集のエンジンになる

 玉井氏が重要だと主張する「顧客の愛着度」については、山口氏が支援する企業にも成功体験があると話す。

「私が社外役員を務めるチョコレート専門店の『Minimal』では、緊急事態宣言下に実店舗を閉じてECにリソースを割いたところ、ECでファンになった方が宣言解除後に店舗を訪れてくれるようになり、代々木上原の店舗は前年比150%を超えるペースの成長軌道を描いています。こちらではECを起点にファーストパーティーデータを取得していたので、顧客とのコミュニケーションにおけるリーチコストを安価に押さえられました。これにより商品のMDを含め迅速な試行錯誤を繰り返せたことが、コロナ禍における事業回復の勝因だったと思います」(山口氏)

山口氏が社外役員を務めるチョコレート専門店「Minimal」のWebサイト
山口氏が社外役員を務めるチョコレート専門店「Minimal」のWebサイト

 両氏は次のような言葉でイベントを締めくくった。

「ブランドコンサルティングを請け負う立場にある私は、この本のメッセージを『企業が顧客から個人情報のデータをもらうためには信頼されないといけないから、一貫したブランド戦略を作りましょう』と解釈できました。良いブランドをつくる意義がひとつ加わったという理解で視界がクリアになった一方で、低関与商材を扱う企業において顧客の愛着を醸成し、わざわざ個人情報データを提供してもらう難しさを再認識しました。これから適切なやり方を探っていきたいテーマです」(山口氏)

「データを集めると言っても、DMPやMAなどの大規模システムをいきなり導入する必要はありません。顧客からデータを提供してもらえるよう、目先の売上ではなく本当に顧客のためになる事業活動をすること。そして、得られたデータから最高のオファーを提供していくこと。これらは大企業でなくても実践できますし、本書で紹介しているケーススタディは多くの企業にとって参考になると思います」(玉井氏)

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/06/18 07:00 https://markezine.jp/article/detail/36380

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