※本記事は、2021年6月25日刊行の定期誌『MarkeZine』66号に掲載したものです。
理想の働き方を探して。会社員とフリーランスを経て起業した理由
株式会社MaVie 代表取締役 志賀祥子(Shoko Shiga)氏
新卒で大手金融機関に入社後、上場企業からベンチャーまで幅広い組織での広報・PRを担当。フリーランスになった後、出産・育児を経て、 2019年にMaVieを創業。広報・ブランディングの助言だけに留まらない戦略立案から施策の実施まで一貫して支援できることが強み。また、働く 女性のためのコミュニティの運営やオンラインラーニングプログラムの提供を通し、多くの女性のキャリアデザインを支援している。
――はじめに、志賀さんがMaVie(マヴィ)を創業された経緯を教えてください。
2019年に創業したMaVieは、「誰もが諦めることなく、自分らしさを活かして働ける会社を作りたい」という思いから立ち上げました。私は新卒でメガバンクに入社し、その後は広報・PRとしてベンチャーから大手企業まで、様々な規模の組織で働いてきました。社長秘書と広報を兼務したり、経営戦略室や広報チームの立ち上げに関わったりと、多様な経験を積める機会に恵まれたのですが、どこかで「女性がライフイベントに左右されずに働き続けるためには課題が多い」と感じていました。
私自身も結婚後に「出産は3年後にしてほしい」と言われた経験がありますし、時短制度があっても実効性が伴っていなかったり、働く母親への理解が浅く、会社を辞めざるをえない女性の先輩たちも少なくありませんでした。そうして、自分らしい働き方を求めてフリーランスになることを考え、2015年に独立し、2017年に出産しました。リモートワークで効率的に働きながら子育てもする、理想的な働き方を実現できたんです。
――当時としては一歩先の働き方ですね。
そうですね。ですが、同業者と知り合う中で、フリーランスの女性ならではの悩みに気づき始めました。たとえば、産休・育休は自分次第だったり、保育園申し込みでは会社員より不利になってしまったり、専門的スキルや実績があっても女性というだけで足元を見られたという方もいました。
また、ワーキングマザーに関わる情報は、いわゆるバリキャリかゆるキャリの二極化になりがちです。でも本当は、自分のバランスで仕事も育児も頑張りたい人がたくさんいる。そんな女性たちに関する情報がなかったんです。そこで、ワーキングマザーを中心にナレッジをシェアしあうクローズドのコミュニティ「Mrelations」を立ち上げました。すると働き方の多様なモデルケースやリアルな課題解決のノウハウを発見できるコミュニティとなり、「こういう場所が欲しかった」と多くの方が喜んでくださいました。
この体験をきっかけに、働く女性の悩みや課題を解決したいとより強く考えるようになり、女性視点を活かした経営コンサルティングやブランディング支援を提供するMaVieをスタートしました。
――ご自身で理想的な働き方を実現した上で、同じ悩みを持つ女性を支援したいと考えられたんですね。
そうです。MaVieは、創業時からリモートワークを導入しており、私自身が時間と場所にとらわれない働き方を確立したノウハウを組織に落とし込んでいます。メンバーにもワーキングマザーがいますから、働きやすい環境を前提としています。
MaVieの事業は大きく2つあります。1つは、女性視点を活かした企業のブランディング支援です。12年におよぶ私自身の広報キャリアや知見を活かして、ブランディングを起点に広報戦略や事業・経営戦略の根底から、オンライン・オフラインをまたぐコミュニケーション戦略や企画・推進を支援しています。企業広報として、コンサルティングだけでは本質的な解決に至らないケースも見てきました。ですので、クライアントと並走して戦略立案からハンズオンまで一貫してサポートすることを大切にしています。
2つ目は、女性のライフとキャリアをサポートする、女性活躍支援事業です。ライフイベントを機に女性は新たなキャリアが始まるといっても過言ではありません。その際に、自分の価値観や強みを明確にしておくことが大事だと思うんです。そこで、オンラインのセミナー、講座などで自分自身と向き合い、自己理解を深めて、次のステップへと背中を押すようなキャリアデザイン支援を行っています。最近はコロナ禍もあってか、手に職をつけたいと、資格系のスキルアップへの関心が高いように感じますが、まず考えるべきは資格を取ったその先のことです。せっかく勉強したのに、未経験だと採用してもらえない、実績が積めないと悩む方は多くいらっしゃいます。自分らしく働き続けるためには、セルフマネジメントや自走力などのソフトスキルこそが必要だと強く感じていて、MaVieではソフトスキルにフォーカスしたカリキュラムを用意しています。