完全にリアルイベントのみに戻ることはない
MarkeZine編集部(以下、MZ):2020年は新型コロナウイルスの影響で、世界中でリアルイベントのほとんどが中止・延期となりました。企業のイベントマーケティングを取り巻く現状についての所感をお聞かせください。
落合:おっしゃるとおり、コロナの脅威の下、リアルイベントが開催されない状況が1年以上続いています。その一方で、社会生活がオンラインにシフトしつつあるのも事実で、イベントも強制的にオンラインへとシフトしています。おそらく2021年秋以降は、徐々にリアルイベントの開催も増えてくると思いますが、お客様との接し方、ビジネスのやり方なども含めてオンラインの価値がわかってきた中で、完全にリアルイベントに戻るということはないと考えています。
MZ:見方によっては、オンラインの価値が発掘されたというわけですね。
落合:そう考えています。今後のイベントはオンラインとオフラインを融合させたハイブリッド型のイベントが主流になってくると思われます。
なぜなら、また緊急事態宣言が発令されるかもしれませんし、一度オンラインイベントの良さに触れてしまったため、それが完全になくなるとは考えにくいからです。だからこそ、これからはオンラインとオフラインに柔軟に対応できる仕組みが必要になります。
ただ、これからハイブリッド型イベントが主流になるといっても、まだまだ成功した事例は多くはありません。Cventは自らのイベントを通じてリアルイベントからオンラインへの移行や、ハイブリッドでの大規模イベントの開催のノウハウを蓄積し、提供しています。この図のように、イベントをハイブリッドにすることでイベント全体での参加者を10倍に伸ばすことも可能になります。そうなってくると、ハイブリッドだからこその課題や業務についてしっかり認識し、それに対応できる新たなツールが必要ですね。
顕在化したオンラインイベントの課題とは
MZ:イベントがオンラインにシフトして1年経ちますが、どのような課題が見えてきたのでしょうか。
落合:この1年、あらゆる企業が試行錯誤でイベントのオンライン対策をやってきました。まず出てきた課題としては、オンラインイベントを実行するツールの開発です。元々イベントマーケティングはスピード感が求められますが、必要な機能を求めて1からシステムを開発していたのでは時間がかかります。多くの企業ではWeb会議ツールをはじめ様々なイベントシステムを組み合わせながら対応していましたが、まずはこの「オンラインイベントシステムの構築」という課題が顕在化しました。
もう1つ出てきたのが、オンラインイベントの価値をどう上げていくかという問題です。イベントをオンライン化するメリットとして、場所や人数の制限がなくなることが挙げられますが、実際に集まった大勢のお客様に対し、どのような価値をオンラインで提供できるのかが問われています。
逆にいえば、来場したお客様がオンラインイベントに期待していることに対し、自分たちのイベントがどこまで対応できているのか。そしてそのイベントをきっかけに、どうセールスにつなげていくのか。これは今後も取り組まないといけない大きな課題であり、特にオンラインイベントからセールスにつなげていく時には、大きな障壁が存在するはずです。
MZ:具体的に、どのような障壁が存在するのでしょう?
落合:端的にいえば、データです。オンラインイベントでたくさんのセッションや展示会を開いた場合、どのお客さんがなんのセッションを見て、どれくらい滞在したのか、そうしたアクティビティデータは、営業から見ると重要なデータのはずです。Web会議システムなどを利用したオンラインイベントでは、参加したかしないか、などといった単純なデータがイベント後に集まるなど、取得できるデータがほとんどなく、営業からみるとあまり価値がない。また、そのデータをどのようにCRMにつなげ、営業活動に役立つデータとして落とし込んでいくかには、まだ課題が残っています。
オンラインとオフラインのハイブリッド型になった時は、さらに課題が増えます。オンラインで取得できていた履歴をオフラインのイベントとしてどのように取得し、どうやってオンラインのデータと連携してマーケティングや営業活動に活かしていくのか。今後、この課題にいかに対応できるかがポイントになると思います。