参加型の体験を通じて既存顧客が新規顧客を連れてくる
西井:オンライン上だけでなく、リアルの場でも既存顧客へのアプローチに成功している企業はいますよね。書籍の中で紹介されていたスノーピークも、リアルイベントを通じて顧客とのつながりを強化していました。テクノロジー以外の方法で既存顧客へのアプローチを強化し、結果的にデータを得るためにはどうすれば良いとお考えですか?

玉井:重要なのは「パーティシペーション(参加)」です。スノーピークのように、リアルの場に何らかの体験を提供すれば、集まった既存顧客の意見を直接聞くことができますよね。たとえば、「次の商品にあなたのアイデアを活かします」という体験を仕込めば、そこに賛同してくれる方は一定数いると思います。その方たちを巻き込むことで、たとえ細かいデータは得られなくても人となりを知ることはできる。中途半端にペルソナを描くより、アイデアのブレークスルーがしやすくなるはずです。
西井:既存顧客と直接つながって傾聴する姿勢を、新規顧客層へのアプローチにも活かしてターゲット内認知をとっていく方法はありますか?
玉井:2つあると思います。1つはいわゆるベタな口コミ。強い先導者を作れば、その人たちが自然とブランドを広めてくれます。
たとえば、ビールメーカーのヤッホーブルーイングでは顧客と一緒に経営戦略を考える場を設けています。参加した顧客は日常会話の中で「ヤッホーブルーイングで経営戦略を考えてきたんだよね」と周囲の人に言いたくなるはずです。
アルゴリズムの発達で増す、“刺さる”コンテンツ作りの重要性
玉井:もう1つは、プラットフォーマーのアルゴリズムです。今の時代はYouTubeやInstagramなど、プラットフォーマーのアルゴリズムが優秀なので、企業がコンテンツを作れば最適なターゲットに届き、必要な認知の自然増が図れます。
西井:それは面白い考え方ですね。今まではテレビCMなどを通じてコンテンツを広く流し、認知度にどう作用したかを図るやり方が主流でしたが、インターネットの世界ではその人が必要とする情報に自然とたどり着くようになっている。
玉井:中国やアメリカでは、地上波ではなくオンラインテレビが中心となっていて、PCやスマートフォンなどのデバイスとほぼ変わらない視聴スタイルでコンテンツが見られています。この波はいずれ日本にもやってくると思うので、アプローチしたいターゲットにアルゴリズムがしっかりと届けてくれるほどの“刺さる”コンテンツ作りがより重要になってくるでしょう。
西井:『サブスクリプションで売上の壁を超える方法』という書籍を出版して約2年が経ちますが、その時にアウトプットした内容が玉井さんの書籍でさらに体系化できたのと同時に、さらにわかりやすく、実務に落とし込みやすくしてもらえました。今日のイベントで、本を読みながら聞きたいと思っていたことを全部聞けてよかったです。
玉井:コロナ禍で多くの生活者や企業が苦しんでいる今は、新しいものを生み出すチャンスでもあると思っています。この本が少しでも皆様のチャレンジの役に立てば嬉しいです。