システム×人力で顧客の課題解決を目指す
BEARTAILが提供している「レシートポスト」は、文字通りスマホのカメラでレシート(領収書)を撮影し、専用のポストに投函するだけで経費精算が完結するサービス。スマホのみで経費の申請と承認が完結するのが特徴だ。既存サービスにはOCR(Optical Character Reader/Recognition:光学文字認識機能。画像データのテキスト部分を認識し、文字データに変換する機能)を活用したものが多い一方、レシートポストは専任のオペレーターが入力を代行することでデータ化の精度を担保する。
ポストに投函されたレシートはBEARTAILが回収し、経費申請データと突合点検を実施した上で提携倉庫にて保管される。必要が生じた場合には1枚単位でレシートの原本を取り出すことも可能だ。これによってオフィスで紙のレシートを保管する手間もなくなる。
経費精算システム自体はレシートポスト以外にも複数の選択肢が存在するものの、Webサービスやアプリといったソフトウェアだけでなく、“ポスト”というハードウェアをセットで提供することにより、従来のサービスでは残ってしまっていた業務負荷を軽減しているのがウリだ。
「仮に他の会社が自動運転車を開発するテスラのような存在だとすると、自分たちはライドシェアサービスを展開するUberのような存在です。つまりシステム単体ではなく、システムと人力をミックスすることで顧客の課題解決を目指すというアプローチを採っています」(BEARTAIL 代表取締役 黒﨑賢一氏)
コンセプトだけで売れて、解約がない状態がPMF
とはいえ、BEARTAIL自体も最初からソフトとハードを組み合わせていたわけではない。2015年に経費精算システムをローンチした当初は、他社と同じようにソフトウェアのみを提供していた。そこから約3年に渡ってサービスの方向性を練り続け、現在のコンセプトを考案できたことが、同社がPMFを達成する決定打になった。
「PMFについてはいろいろな考え方がありますが、私自身は『プロダクトがコンセプトだけで売れる状態』であり、その上で『解約されないこと』が重要だと考えています。たとえば(コンセプトを記した)紙を一枚見せただけで売れるかどうか。実際にレシートポストはプロダクトの管理画面などを見せずとも、資料を基に口頭で説明してご契約いただくことが多いです。その状態で他社との差別化を語ることができ、自社プロダクトの特徴を掴んでもらう必要があります」(黒﨑氏)
家計簿アプリから経費精算サービスへとシフト
もともと家計簿アプリを主力事業としていたBEARTAILが経費精算システムに舵を切ったのは2015年のことだ。家計簿アプリの収益化に苦戦する中で、引き続き注力するのか、別の事業も模索するか。悩んだ末、黒﨑氏たちは過去に検討したことのあった経費精算システムに取り組むことを決断。経費精算システムを選んだのには、いくつか理由があった。