テレビ広告で扱うデータを「買い手の指標」にすべき3つのポイント
では、具体的にテレビCMの投下指標を、事業部が「買い手の指標」にしてほしいと主張すべき3つのポイントを下記に示します。
(1)GRPではなくテレビCMの表示回数(インプレッション数)と到達人数に変換すること
(2)これによってエリアごとのCPM(1,000回当たりのコスト)がすぐ算出できるので、エリアごとの単価を評価すること
(3)販売管理エリア(たとえば販社エリア)ごとのテレビCMの投下量に再編集すること
ポイント1
1つめのポイントは、CMの視聴者数と視聴回数を絶対数で把握する意味は前述したように、人口減少やテレビ離れによって母数が変化しているため、パーセンテージではマーケティング指標にはならないことを宣伝部とも共通の認識をもつことです。
ターゲットが世の中に何人いて、何人に何回CMを当てて、そのうち何人が何個商品を買ってくれるかを計算することで、ターゲット1人あたりの到達コストや認知者1人あたりの獲得コストが明確になります。これは、ファネルごとに広告プロモーションコストの計算をする上での大前提になります。
これが把握できないと、アロケーション(最適配分)はできません。ファネルのどこに配分するかが、アロケーション作業の基礎です。こういう基礎作業をしないでいきなりテレビとデジタルの配分を求めるのはナンセンスなのです。
ポイント2
2つめのポイントは、GRPで買い付けてスポットをエリアごとにパーコスト管理していると、エリアごとに1人当たりの到達コストが著しく違うことです。意外にも宣伝部も、この事実に気づいていないことが多いです。
ある会社の持ち単価で計算したところ、関東地区の1人あたりのコストは九州地区の3倍以上ありました。需給状況で買値が形成されてくると東京ばかりが高くなりますが、人口が多いから仕方ないと思っているかもしれませんが、1人あたりでも高いことを認識すべきです。
テレビとデジタルのアロケーションをするにしても、デジタルは全国一律単価なので、テレビ側を整地化して、エリアアロケーションをしてからでないと、デジタルとのアロケーションも精緻にはできないのです。
ポイント3
リアル店舗流通網で販売している商品であれば、自社の販売エリアというものがあります。流通側にも統括しているエリアがあり、配荷もエリアごとに管理されています。テレビCMの投下指標を「買い手指標」にするのであれば、広告主としての買い手のデータに再編集して投下実態を見たいものです。これが3つ目のポイントです。
たとえば、関東地区も北関東3県がひとつの販売管理エリアだったり、酒類であれば山梨が関東に入っていたり、関東甲信越がひとつのエリアだったりします。であれば、視聴率の調査エリア単位(これはもちろん放送局のエリア=売り手の指標)ではなく、自社の販売エリアに視聴データ(自社や競合のCM到達データ)を再編集して把握することがブランドマネージャーには必要です。
なぜなら当然正確な販売数、販売額は販売管理エリアごとに集計されている訳ですから、広告の投下量と販売数、販売額をしっかりオーバーラップさせて初めてその効果を評価できるというものです。
テレビメーカーの視聴データサービスには、端末のある住所の郵便番号ごとに把握して視聴データを獲れているので、どこでCMを受信しているかで、エリアをカスタマイズすることができます。これも放送の送り手側のデータではなく、放送の受け手側のデータに再編集するという思考で、テレビCMの買い手の論理で、指標を改めるということです。
この3つを、事業部側は宣伝部に要求すべきですし、宣伝部は事業部の要請にしっかり対応しなければなりません。