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SDGs、ソーシャルグッドの話題が増える今、企業に求められる「発信力」とは?本田哲也さんに聞く

 2009年に『戦略PR』を上梓して以来、国内外のPRの最新動向を発信し続けてきたPRストラテジストの本田哲也氏。2021年8月には最新刊『最新版 戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を刊行した。SNSが持つ影響力の増大、SDGsやソーシャルグッドといったトレンドを踏まえながら、2021年のカンヌライオンズ受賞作を紹介するなど、事例のおよそ半分をアップデートしたという。本記事では同書の内容を基に、企業が発信を行う上で今求められる視点を紐解いていく。

SNSの影響力が増す今、PRの手法にも変化が

MarkeZine編集部(以下、MZ):今日は『最新版 戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』の内容に触れながら、お話をうかがいます。本書ではカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(以下、カンヌライオンズ)の2021年の受賞作を複数取り上げて、PRにおけるクリエイティビティの重要性を解説していらっしゃいましたね。

本田:本書の旧版(2017年4月刊行)でもお伝えしていたことですが、クリエイティビティはますます大切な要素になっています。

 もともとPRはジャーナリストが作った業界ということもあって、どちらかと言えば真面目で、広告の人たちのほうがクリエイティブなアプローチが得意という風潮がありました。ですが、インターネットやSNSの登場で情報流通の経路が変わり、PRのお作法にも変化が生じています。

 PRを「ある情報を社会に増幅させる企て」とするならば、いわゆる口コミマーケティングやシェアラブル・コンテンツ(拡散性の高い情報)の影響力は無視できません。今までのようにプレスリリースを作って、“真面目な情報”として記者さんに渡したり、記者会見をやったりという手法がなくなるわけではないのですが、そうではないアプローチも必要になっており、そこでクリエイティビティが重要になると捉えています。

株式会社本田事務所 代表取締役/PRストラテジスト 本田哲也氏
株式会社本田事務所 代表取締役/PRストラテジスト 本田哲也氏

MZ:情報流通の変化にともなって、新しい手法が求められているのですね。

本田:はい。ただ、ここで言うクリエイティビティは、いわゆる制作におけるクリエイティビティとは少し違っていて、本の中では「とんちクリエイティブ」「やられた感エフェクト」といった言葉で紹介しています。

「やられた感エフェクト」が情報を増幅させる

MZ:クリエイティビティが光る事例として紹介されていたのが、カンヌライオンズの2021年の受賞作である、バーガーキングの「The Moldy Whopper(カビの生えたワッパー)」でしたね。

 2020年2月、バーガーキングは同社の主力商品であるハンバーガー「ワッパー」が日数の経過に従ってカビだけになっていく様子を、動画や屋外広告で公開。インパクトの強いビジュアルは、世界中のニュースで取り上げられSNSでも拡散した。この発信を通じて同社は、「食品、特にファーストフードには添加物がたくさん使われている」という世の中の認識に対し、「バーガーキングの商品は人口防腐剤を使用していない」と訴えることに成功し、売上高14%アップ、ポジティブな感情が88%アップといった結果を残した。

Burger King | The Moldy Whopper

本田:はい。「まさか食品を扱う企業がこんな伝え方をするなんて」という驚きがありますよね。PRで求められるクリエイティビティとは、ただ絵面がきれいとか面白いということではなく、まさにこのワッパーのような「やられた!」「その手があったか」という機知性なんです。そういうものを見たり聞いたりすると、誰かに言いたくなる。自分が経験したことと、同じことを再現したくなるんですよね。

MZ:本の中にも、「とんちの利いた話というのは、それ自体がすでに『シェアラブル・コンテンツ』」という記述がありました。

本田:「うわ、こりゃ一本とられたわい!」という読後感や印象を残すことが、情報を伝播させるうえですごく大事なことなんです。

 この事例について付け加えると、大前提として、扱っているのは真面目な話題です。食の安全やトレーサビリティーの話で、SDGsにも通じてきますよね。でも、そういう話はすでに世の中に溢れかえっていて、埋もれてしまってなかなか届かない。普通に伝えていては目に留めてもらえない情報をアイデアによって伝えた点が、素晴らしいと思います。

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この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

OGURA(オグラ)

フリーランスフォトグラファー

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MarkeZine(マーケジン)
2021/09/24 07:00 https://markezine.jp/article/detail/37270

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