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MarkeZine Day 2025 Retail

次世代マーケティング教室

“香りの言語化”で購買体験は進化する

香り選択のコミュニケーションで購買の決断を後押しする

 KAORIUMのシステムは、既に販売促進の場で実際に活用されている。たとえば、香水専門店の「NOSESHOP」では、2021年4月1日〜5月5日にかけて、新宿と銀座にてポップアップを開催。「NOSESHOP」が取り扱っている個性的なフレグランスが詰まった20本のボトルから好きな香りを選び、KAORIUMのシステムを使って感じた香りのイメージに近い言葉(「透明感」「ロマンティック」など)を直感的に選択していくことで、一人ひとりの好きな香りを選べる“嗅覚”体験を提供した。体験とセットで提供した結果、ポップアップ開催期間中の購入率は通常時の約3倍に上昇したという。

NOSE SHOP×KAORIUM -超感覚“嗅覚”体験POP UP
NOSE SHOP×KAORIUM -超感覚“嗅覚”体験POP UP

 SCENTMATIC社代表の栗栖俊治氏は、「『こんな香りが好き』というなんとなくの感覚を明確にすることで、より納得感をもってその商品を選ぶことができます。自分が好きな香りを明確に言語化し、逆に好みではない香り、なんか違うなという香りも明確に言語化することで、より自分が好きな香りのものを迷いなく、クリアに決定できます。そうすることで、購買の決断を後押しすることができたと思います」と話す。

 選択するうえで香りが重要なファクターになる商品の販売促進において、香りの言語化が追い風になる可能性は大きい。栗栖氏は、香りがおもてなしの一環であるホテルや、自動車販売の場など、幅広い領域における導入が期待できると話す。

 その他にも、同社では昨年12月には、酒ソムリエ・赤星慶太氏と協力し、日本酒の風味を言語化する日本酒ソムリエAI「KAORIUM for Sake」をタブレット型ツールとして開発し、酒販店や飲食店向けに提供を開始している。日本酒が持つ独特の風味と様々な言語表現のデータベースを結びつけることでその特徴を言葉として可視化し、これまでにない新しい日本酒の選び方を生み出している。

KAORIUM for Sakeの利用イメージ
KAORIUM for Sakeの利用イメージ

 2020年12月に開店した横浜髙島屋地下1階にあるフードペアリングバー「BAY-ya」では、「KAORIUM for Sake」を用いて顧客の好みの香りを聞き出しながら販売している。別店舗での実証実験では顧客の日本酒注文数や客単価が増加する検証結果を得られたという。

 そのほかにも、幼児教育コンテンツを開発するミライLABOと連携して、新型コロナによる臨時休校時に活用できる「香り感性教育プログラム」を開発。子供たちが身近な香りのあるものを用いて、香りを感じ、言語化することでオリジナルの物語を作成する体験コンテンツを提供するなど、様々な分野との共創プロジェクトを実施している。

香りは生産性の高いコミュニケーションツールになる

 香り表現のAI開発は、著作権フリーの青空文学などを読ませることで構築を進めている。今後はアニメの表現など、学習させるリソースの幅を拡げていくそうだ。「男性的・女性的」とジェンダーバイアスのかかった概念やアダルト表現などのブラックリストのみを規定し、幅広く表現学習をさせていくという。

 香りの好みは一人ひとり実に異なり、非常に定性的であることから、ニュアンスを的確に表せる豊かな表現の幅は必須だという。

 「香りの好みとそれをどういう香りと感じるかは様々です。アメリカで好まれる香りと日本で好まれる香りは異なるなど、文化的背景にもよります。また年代によっての傾向もあり、たとえば、若い世代には人気のキンモクセイの香りは、シニア層にはトイレの芳香剤を想起する人もいて、あまりポジティブな印象がない人も多いということもあります」(栗栖氏)

 生理的な影響が関与している香りも、多くの人が共通して同じ感情を想起する傾向にあるという。たとえば「赤ちゃんのにおい」は、多くの女性が「愛おしい」という感覚を持つそうで、一種麻薬のような感覚を抱く傾向があるとする研究もあるそうだ。

 特定の香りがそれに結びつく記憶や感情を呼び起こす現象をプルースト効果と呼び、香りが鮮明に記憶を呼び起こすことがままある。また、香りは意識して嗅ぐことで、右脳・左脳の双方が活性化するともいわれ、生活において非常に重要な要素だ。にもかかわらず、それに紐づくお互いの表現には齟齬が生じやすい。この齟齬を埋めることで、香りを生産性の高いコミュニケーションツールに昇華できると栗栖氏は見込んだのだという。

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アスリートの理想の“勝負香り”作りにも

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この記事の著者

笹山 真琴(ササヤマ マコト)

Makoto Planning,Inc. 代表取締役

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/09/28 08:45 https://markezine.jp/article/detail/37323

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