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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

MarkeZine Day 2021 Autumn

ブランドらしさを守りつつ、時代に合わせて少しだけ冒険する。森永乳業「ピノ」が目指すコミュニケーション

アイドルのソロデビューの手法をプロモーションに応用!

 施策の一つが、2020年11月に実施された「ピノ やみつきアーモンド味」の販売だ。アーモンド味は通常、アソートパックのみに入っているが、顧客から「いつもアーモンド味の取り合いになるのでもっと数を増やしてほしい」「アーモンド味だけの商品を販売してほしい」といった声が多く寄せられていたため、期間限定で単独販売することにした。

 「ただこうしたケースでは、熱烈なファンは喜んでくれるものの、それ以外の人は冷めてしまうということになってしまいがちです。そのため、『アーモンド味はこんなに人気があるんだ』ということを可視化し、ファン以外の人も巻き込んでいこうと考えました」(尾上氏)

 そこで着目したのが、アイドルグループのメンバーがソロデビューをするときに生まれる盛り上がりだ。以前からのファンが盛り上がっている様子が可視化されることで、グループの存在を知らなかった人の間にも「人気のアイドルなんだ」という認識が生まれ、それが社会的な評価となっていく。この流れを再現すべく、今回の発売を「アーモンド味のソロデビュー」と位置づけ、企画を練った。

電通 プランナー/クリエイティブディレクター 尾上 永晃氏
電通 プランナー/クリエイティブディレクター 尾上 永晃氏

 特に工夫したのが期間限定発売という情報の伝え方で、アイドルがソロデビューするときの流れを再現。通常のプレスリリースによる発表ではなく、「文春オンライン」にソロデビューをすっぱ抜かれた、という設定で公表した。想定通り、SNS上で大きな話題となった。

 「いわゆる記事広告なのですが、記事のタイトルやトーンは本物のスクープのようにしていただきました。実際に弊社の商品担当者が社屋前で記者の直撃取材を受け、パシャパシャと写真を撮られていました(笑)」(加藤氏)

講演資料より(該当記事は公開終了)
講演資料より(該当記事は公開終了)

 さらに、アイドルがスクープされた時の事務所の対応に則り、ピノアーモンドのソロデビューに関するFAXコメントをTwitter上で公開。「2020年11月23日(月)より、24粒入りピノアソートパックから単体6粒入り“ピノやみつきアーモンド味”としてソロデビューいたします。」などと綴られた文章に対し、応援のコメントが多数集まった。

  ファンには熱望されていたピノアーモンドの単独商品化だが、実は1998年頃に一度だけ北海道でテスト発売され、結果が振るわなかったという過去があった。この「つらい過去」も、プロモーションへと活かすことにした。

 「北海道新聞に『また売れなかったらどうしよう』というタイトルで、新聞広告を出しました。『みんなちゃんと…買ってくれるよね?つぎ売れなかったらホント泣く。』というソロデビューしたての不安な気持ちを吐露した内容なのですが、こちらも大きな話題となり、ニュースなどでも取り上げられました」(尾上氏)

講演資料より
講演資料より

 様々な施策の結果、想定以上のヒットとなり、ピノアーモンドは早々に売り切れに。

 「売り切れてしまったことはメーカーとしては申し訳なかったのですが、本当に驚くほどの早さでした。Twitterを中心に盛り上がりが生まれていて、やっぱり『応援したくなる』という気持ちになってもらえたことが大きかったのだと思います」(加藤氏)

Twitterトレンドに3回入った「アイスと平和」キャンペーン

 2021年には、新たなキャンペーン「アイスと平和」を展開。「なかよしで行こう。」というメッセージを軸に、特設サイトや新聞広告、PR動画を制作した。

「なかよしで行こう。 | ピノ 森永乳業」より
特設サイト「なかよしで行こう。 | ピノ 森永乳業」より

 企画にあたって大切にしたのは、世の中の空気と、ピノがブランドとして蓄積してきた価値の両方を踏まえることだった。

 「加藤さんとは、昨年後半に『2021年はどんな年になるだろう』という話をしました。コロナ禍で分断が見られた世の中に揺り戻しがきて、平和というテーマが大きくなっていくのではないかと考えました」(尾上氏)

 「ただ、ピノは身近にある小さな粒のアイスなので、あまり身の丈に合わないことを語るのも少し違う、という悩みもありましたよね」(加藤氏)

 このようなディスカッションを経て、ピノが語るのは「世界平和」のような壮大なものではなく、「身のまわりにいる人との身近な平和」と考えた。また、分け合って食べられるピノの特長を活かし、身近な人と分け合って仲良しになるという発想が生まれた。その世界観を体現してもらうタレントには、メンバー同士の仲が良いことで知られる男性アイドルグループV6を起用した。

 PR動画は6人全員が出演するものと、2人ずつ出演するものがあり、ピノについてより知ってもらったり、食べたくなるようなシーンも含まれている。

 「PR動画は、V6さんの名前と彼らが26周年であることにかけて、毎回6のつく日の6時26分に公開し、それもさらなる話題化につながっていたと思います。結果的に、Twitterのトレンドに3回入り、380のメディアに掲載され、16の番組で紹介されました」(尾上氏)

 「V6さんにオファーしたのは解散発表の前だったので、解散の話が出た時は正直戸惑いました。しかし、解散してもV6の皆さんの仲の良さは変わらないはずと考え続行することを決めました。実は動画のほとんどが台本なしの自然なトークで、『なかよしで行こう』『アイスと平和』の世界観を本当にうまく体現してくださったと思っています。ファンの方を中心に話題化し、そこからさらに広がって、多くの方々にピノを改めて知ってもらう機会となりました」(加藤氏)

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ロングセラーほど、好きになってもらうための仕掛けを

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行う。2008年よ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/21 07:00 https://markezine.jp/article/detail/37384

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