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Uber Eatsの広告メッセージには、どんな狙いが?|Uber Japan中川さんに聞く・前編

どんな狙いをもって広告を設計しているのか?

木村:セグメントを分けてコミュニケーションをする、とは具体的にどのようなものでしょうか?

中川:まずセグメントについてご説明すると、Diffusion of innovations(イノベーター理論)は古典的なモデルとして知られていますが、Uberのような新しいサービスを展開する業界では、これがものの見事に当てはまる形でグロースしていくんです。

 イノベーターの人たちは、こちらが何もしなくても自分から探しに来て使ってくれます。アーリーアダプターの人たちはコミュニケーションしていけば使ってくれるけれども、アーリーマジョリティーに入っていくと、やはり説得しないとなかなか使ってくれない。このように、グロースカーブが目に見えて変わっていきます。

木村:そのことが、コミュニケーションにも反映されるのですね。

中川:はい。一緒くたにしてコミュニケーションしない、というのは常々気を付けていますね。

 まずフードデリバリーの存在を知りません、という人に知っていただく。そして「知っています」という人の中でUber Eatsが第一想起になる。このように認知や第一想起をとるのは、テレビCMのようなマスマーケティングが得意とするところです。

 そして第一想起をとれた人には、使ってもらうためのステップとして、レレバンシー(関連性の高さ)を感じてもらう。多くの人にとってレレバントなモーメントはその分、1人ひとりに対してはそれほど強く響く内容ではなかったりしますので、セグメントごとに、「『あなたにとって』こういうときに使うと便利ですよ」と、できるだけ細分化したメッセージを伝えます

 また、同じ人に伝えるとしても、「会社で使うと便利ですよ」という広告は平日の昼にリーチしたほうがレレバントですし、夜になって家事もやらなければいけない状況だとするならば、そういう文脈を踏まえたコミュニケーションのほうが響きますよね。このような出し分けには、デジタルをメインで使っています。

 それから、Uber Eatsは食事だけでなく食料品や雑貨も取り扱っているのですが、これから初めてサービスをご利用いただく方々に対しては、そちらを訴求していくということもやっています。やはり「外食は贅沢品だ」と思う方や、出前を取ることに抵抗がある方もいらっしゃると思うんです。そういう方々には「シャンプーやトイレットペーパーを買ってみてください」というほうが、響きやすい場合もあります。

木村:食料品や雑貨はアップセルやクロスセルだと思ってみていたのですが、「一回使ってみよう」と動いてもらうためのフックになっている、というのはとても興味深いです。

中川:もちろんアップセルの意味合いもありますし、Uberのビジョンは「Go anywhere, get anything」ですので、ラスト・ワン・マイルの課題を解決するアプローチの一つでもあります。ですがマーケティング的な視点で見たときには、コミュニケーションの一つとして有効に使えると思っているところです。

“インサイトフル”な広告を作るための消費者理解

木村:ありがとうございます。Uber Eatsのようなオンラインフードデリバリーには、端的に言うと、「好きなとき・好きな場所に食べ物を届けてくれる」という統一されたベネフィットがありますが、それをどうコミュニケーションするかがマーケターの腕の見せ所だと思います。UberさんのテレビCMは、たとえば帰宅途中にオーダーして、家に着いた途端に届けてもらうような描写があったりして、非常にインサイトフルですよね。こうしたコミュニケーションを行うためには、ユーザーのインサイトを発掘していくプロセスが必要になると思いますが、どのようにされているのでしょうか。調査や消費者インタビューなどはされていますか?

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中川:P&Gやユニリーバで経験するコンシューマーリサーチと近いような定性・定量調査は、結構なスケールでやっています。毎回リサーチ自体をデザインしていくところから始めるのが特徴かと思います。なぜそうするかというと、オンラインフードデリバリーは新しいカテゴリーなので、正解がわからないからなんですよね。ヘアケアなどの場合は既にラーニングがあるため、一から設計しなくてもよかったりするのですが、そうした蓄積がない領域なので、アドホックに設計して実施することが多いです。

木村:定量のほうは、認知やブランドイメージ、エクイティーなどを追い掛けていらっしゃるのでしょうか。

中川:はい。定量的なモニタリングも消費者の傾向に関する不定期調査もやっていますし、一般的な認知度とブランドアセットがどういう関連を持ってるかといったことの定点的な観測ももちろん行っています。

 他には広告のリサーチもやりますね。新しいキャンペーンの広告を作ろうとするときに、ストーリーボードからリサーチするような調査のことです。これも、それほどやり方が定まっているわけではないため、一定以上のスコアが出なかったらオンエアしない、という使い方ではなく、どちらかと言うと改善点を探すためにやっていると思います。こうした調査は、グローバルの調査部隊と一緒に設計・実施しています。

木村:ありがとうございます。やはり定点観測はしっかり行い、インサイトを見つけるための定性テストもするし、コミュニケーションの投資についても、やはり判断する前にはある程度のテストをされているのですね。

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レストラン、配達パートナーの第一想起も重要

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この記事の著者

木村 元(キムラ ツカサ)

株式会社Brandism
代表取締役

ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にてダヴを担当し、グローバル全体のブランド戦略設計をリードした後、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/12/15 08:30 https://markezine.jp/article/detail/37685

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