データ規制の影響は、マーケターの進退にも変化を起こす
2022年4月に改正個人情報保護法が施行される。日本でも欧州のGDPRの思想が徐々に普及するはずだ。「個人データは個人のものである」という考え方がその基本にある。
2021年9月8日付で『World Economic Forum』のサイトに次のタイトルの記事が掲載された。
「Most workers are poorly protected with respect to data access and portability under current regulatory regimes」。意訳すると、「雇用する側が多くの情報を持ち過ぎだ。労働者(従業員)はデータ権を主張しなければならない」といった意味合いである。
この記事は、データ・ポータビリティを、労働者にも適用すべきだと主張している。たとえば、「Employers hold too much power over information. Workers must claim their data rights」(ほとんどの労働者が、データへのアクセスやポータビリティなど、現状の規制では、十分に保護されていない)など。
つまり、労働者のデータ(入社時の履歴書やその後の評価・査定など)は、会社ではなくて個人のもの。それにアクセスしたり持ち出したりする権利が労働者にはある。
この記事の背景には、Uberなどのタクシードライバーを顧客が評価する仕組みがある。評価データはドライバーのものであり、転職する場合は、きちんとそれを引き継ぐべきだ、と。
広告業界でいえば、博報堂から電通に転職する場合に、博報堂での評価や査定、あるいは、どのくらいマーケティングROIやコンバージョン率をアップしたかなどのデータを、その転職する個人が電通に引き継ぐことで、電通側でもその実績に応じて、適切に給与を支払うということだ。
人事系データは個人のものであって、会社の占有物ではない。これは、個人の権利である、と。
個人データは個人のものであるという思想が普及し、その規制が広告業界の労働者にまで及ぶとき、マーケティングROIやコンバージョン率を改善できる個人は、高い報酬でヘッドハンティングされるだろう。あるいは、多くの独立するチャンスに恵まれるのではないか。その結果、日本のCPMも高くなっていくはずだ。
