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特集:2022年の消費者インサイト

調べない消費者、ジェンダーレス…2022年の消費者インサイトを読み解く、5つのキーワード

キーワード2:「応援・推し活消費」

 近年、カテゴリー内のコモディティ化が進み、商品の差分がなくなってきていると感じる消費者が増えています。問題なく使える・適度に美味しいなど、どの商品にも不満はないのでどれでもよくなってしまう。その結果、値段が一番安い、手ごろなものが選ばれているというのが実情です。

 しかし、消費者は安いものだけを買いたいと思っているわけではなく、「いいものにはきちんとお金を出してもいい」と思っています。

 そんな今のトレンドであり、徐々に根付いているのが、生産者と消費者が直接つながることができるD2Cという新たな商流です。「Makuake(マクアケ)」を中心としたクラウドファンディングや、コロナ禍以降さらに脚光をあびた農家と消費者を直接つなぐ「食べチョク」など、商品の作り手・提供者の「顔が見える」サービスが注目を集めています。今はまだ少数派ではありますが、若い世代を中心に利用したことがあるという人も徐々に増えてきています(図表2)

図表2 クラウドファンディングで商品を買ったことがある(タップで画像拡大)
図表2 クラウドファンディングで商品を買ったことがある(タップで画像拡大)

 なぜ、こうしたECサイトが選ばれ始めているのか。そこには、「応援消費」という兆しが見えています。

 「応援消費」「推し活」というキーワードは耳にする機会も増えてきていると思いますが、ここ数年、「誰かを応援するために消費を行う」というのが、大きなムーブメントとなってきています。これらはアイドルなど、タレントを応援したいという気持ちから始まったものですが、根底にある「人を応援したい」という気持ちはZ世代を中心に高まってきており、エンターテインメント以外でも、様々な場においてその動きが現れ始めています。調査データを見てみると、「人・お店・企業を応援するために、商品・サービスを選ぶことがあるか」という質問に対し、Z世代の約4割が「当てはまる」と回答しています(図表3)

図表3 人・お店・企業を応援するために、商品・サービスを選ぶことがある(タップで画像拡大)
図表3 人・お店・企業を応援するために、商品・サービスを選ぶことがある(タップで画像拡大)

 このように、若い世代を中心に「どうせお金を払うのなら頑張っている、困っている誰かのために払いたい」という“他者貢献意欲”が、新しい消費の価値観として現れてきているのです。 この兆しを受け、2022年はプロダクトだけでの差別化ではなく、企業やブランドの努力や想い・こだわり・プロセス・ストーリーをもって顧客と積極的に向き合い、関係性を深めることで差別化を行うことが重要になってくるでしょう。

キーワード3:「おまかせ(省エネ)消費」

 インターネットやSNSの普及により、情報の流通量は莫大なものとなりました。情報があふれすぎていて、どれが信頼できる情報なのか「取捨選択ができない」と感じる消費者が増えてきています。

 一方でYouTubeやAmazon、Instagramなど各プラットフォームのリコメンド機能は精度を高めており、消費者が自ら調べなくても「欲しい情報が勝手に集まる」ようになってきています。こうした中で、今Z世代を中心に「調べるのが面倒くさい」と感じる消費者が増えてきています。彼らは「自らに最適化された情報の中から欲しいものを選ぶ」という行為に慣れてしまっており、最早その便利さから離れられなくなっているのです(図表4)

図表4 お勧めされた情報を見て、商品・サービスを選ぶ機会が増えた(タップで画像拡大)
図表4 お勧めされた情報を見て、商品・サービスを選ぶ機会が増えた(タップで画像拡大)

 欲しいものや知りたい情報は勝手にリコメンドしてもらえるため、その中から好きなものを選ぶ「調べない消費者」も増えてきています。考えるのは脳に負荷がかかるため、思考を代替してくれるとなればこんなに楽なことはありません。この「思考代替」はトレンドのひとつとして、今後もニーズが高まっていくでしょう。

 新型コロナウイルスの流行にともなう外出自粛から、オンラインでの購入が増えました。ECの便利さを知ってしまったので、コロナが明けたとしても、オンラインは引き続き伸びていくでしょう。一方でリアルにも人が戻っていくはずですので、リアルとオンラインの併用が進んでいくと考えます。使い分けとしては、欲しいものを探す、偶発的な出会いを求める時はリアル店舗に、いつもと同じものを買う、リコメンドの中から選びたいときにはオンラインを選ぶようになりそうです。調べない消費者・リコメンドに乗っかる消費者は、2022年もオンラインで進行すると考えられます。

 そのため、2022年メーカーサイドに強く求められるのは、消費者の好みを学習し、リコメンドの精度を上げて、より彼らにフィットした商品をお勧めしていくことです。自社のECサイトのリコメンド精度を上げていくことはもちろん、InstagramやTwitterなどのSNSプラットフォームを活用し、欲しい人のところに情報がいくよう発信することも重要となります。またオンラインで商品を選びやすくするためには、モノがしっかりと確認できること、使用感などを動画で確認できたり、使用者のリアルな声がすぐに確認できたりというのも大事になります。そのスキームがきちんと組まれているのかも考えていくべきポイントです。

 今の消費者は「元祖・定番はコレ」「今話題、〇〇が使った」「今月のランキング・人気」など、コンパクトに納得できる情報を知りたいと思っている人が多いので、その辺りも押さえておくことが重要になるかと思います。

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キーワード4:「ジェンダーレス消費」

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この記事の著者

犬飼江梨子(イヌカイ エリコ)

消費者心理分析専門家 マーケティングリサーチ会社 (株)イー・クオーレ代表取締役
15年間で約1万人の消費者心理を分析。「顧客が真に求めるニーズを見つけ出し、それを解決する方法を考える」ための調査に定評がある。消費者の変化に注目し、新商品開発のための調査や商品リニューアルのための調査を多数実施し、売れる商品を作るため...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/01/25 07:30 https://markezine.jp/article/detail/38155

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