成長があれば、人は熱狂する。その成長を作るのが、マーケターの仕事
MZ:最後に挙げていただいたのは、(4)見えない未来を信じぬく事業への熱狂です。マーケターに限らず、メンバー全員が高い熱量を持つことが理想だと思いますが、そうした状況を作るために、田部さんはどんなことをしていますか?
田部:マーケティングの話からいったん離れますが、経営者として重要視するのは事業と組織、そして財務という3要素です。実は事業モデルは、真似がしやすいのですが、その会社で働く人や組織というのは一朝一夕で真似できるものではありません。だから組織を強くするというのは、事業成長のためにも重要なのです。
ただ、どんな事業であれ、創業した人とそうでない人の熱量の差はあります。そのうえで「見えない未来を信じぬく事業への熱狂」をメンバーにも伝えていくために、2つのことが重要だと考えています。
まず重要なのは、「どのように事業をやっているのか」という方法の面ではなく、「なぜこの事業をやっているのか」「どんな意味があるのか」の意義の面を繰り返し語っていくことです。いわゆるビジョン・ミッション・バリュー、最近はパーパスと言われていますね。私としても、非常に力を入れています。
もうひとつは、やっぱり自己成長だと思っていて。その人が働いている中で成長するオプションがなければ、その事業に執着や熱狂することはないと思うんです。事業も成長するし、そこで働いている人も全員成長している。この成長の角度が高いということが、非常に重要だと思っています。スタートアップやベンチャーで言うと、少なくとも半年から1年で自分は明らかに成長した、と思えるという状態を作れているかどうかです。

成長さえ作れれば、人はその事業を魅力的に思うし、熱狂する。事業も個人も成長していなければ、どんなに意味のあることをしていても、やりたいことをやっていても、魅力を感じなくなっていきます。そう考えた時、マーケティングという仕事の良さは、その”成長”を自分たち自身で作れることなんです。自分たちが事業を成長させ、関わっている人自身も同時に成長する。その成長が熱狂を生んで、さらにその先を目指していける。素晴らしい仕事です。もちろんマーケティング以外にも事業成長の要素はあります。ただ、成長の角度を作ることに誰よりも最前線で向き合うことができる、幸せな仕事だと思っています。
本連載ではこれから、田部さんと有識者・CMOの方々との対談をお届けする予定です。お楽しみに!
