※本記事は、2022年1月25日刊行の定期誌『MarkeZine』73号に掲載したものです。
「投げ銭(なげせん)」とは、ライブ配信中に視聴者から配信者に対して感謝や応援の気持ちを込めて、お金、または換金することができるギフトを送るシステムのこと。最近では、投げ銭によって巨額の収入を得る「ライバー」が次々と登場して話題となっている。また、投げ銭システムは個人のブログやWebサイトにも導入されたり、Twitterにも「Tips」という応援したいアカウントに直接送金できる投げ銭(チップ)機能が搭載されたりと、その活用シーンが広がっている。そこで今回は、投げ銭をしている人にスポットを当て、どのようなライフスタイルを送っているのか、マクロミルの「ブランドデータバンク」および「A-cube」のデータから明らかにしていく。
「投げ銭」は、路上でストリートパフォーマンスを行っている人がその前に箱を置き、観客にお金を入れてもらう仕組みのオンライン版と思ってもらえるとイメージしやすい。長引く新型コロナウイルスの影響で活動の場を失ったアーティストなどはオンライン上でライブ配信という形で活動の場を見つけ、ライブを行う。その際の収入が「投げ銭」という形になっており、コロナ禍を契機に注目が高まっている。
記事の前半ではスマホアプリログデータを取得・分析できるサービス「A-cube」から「投げ銭」の実態を分析。後半のプロファイル分析においては、全国3万人に約130ジャンルにおよぶ、所有/嗜好などを聴取し蓄積している「ブランドデータバンク」の全体(n=31,197)のスコアと比較した『投げ銭実施者』の傾向を明らかにしていく。
なお、今回の調査概要は下記の通り。
『投げ銭実施者』の定義:
ブランドデータバンク第33期調査回答者のうち、「課金したことのあるサービス」の設問で「投げ銭」と回答した人(n=287)
『全体』の定義:
ブランドデータバンク第33期調査回答者(n=31,197)
『投げ銭ログ取得者』の定義:
上記『投げ銭実施者』で、かつ2021年7月時点の「A-cube」で利用ログを取得できている人(n=39)
『アプリログ取得者全体』の定義:
上記『全体』のうち、2021年7月時点の「A-cube」で利用ログを取得できている人(n=4,451)
「投げ銭」をしたことがある人は1% 実施者はアプリの起動時間が長い
最初に、スマートフォンアプリの起動ログ・操作ログから投げ銭実施者を理解していく。
今回、分析対象としたのはGooglePlayにて定義されている「エンタメ」「ソーシャルネットワーク」内の利用率上位100アプリから、投げ銭機能がある14のライブ配信アプリ(図表1、水色の部分)。
約3万人を対象にしたブランドデータバンクの調査によると、「課金したことのあるサービス」の設問で「投げ銭」と回答した人は、全体の1%ほど。そこにマクロミルが保有しているA-cubeも重ねて「投げ銭ログ取得者」(投げ銭をしたことがあり、かつA-cubeで利用ログが取得できている人)を見ると、投げ銭ログ取得者の46%が分析対象のライブ配信アプリを保有していることがわかった。
次に対象アプリの起動率を見ると、投げ銭ログ取得者とアプリログ取得者全体ともに6割強と、大きな差が見られなかった。
しかし、分析対象アプリの1ヵ月あたりの平均起動時間を見ると、投げ銭ログ取得者はアプリログ取得者全体の約5倍の長さ、1ヵ月あたりの平均起動回数においても投げ銭ログ取得者はアプリログ取得者全体の約4倍の起動回数となっており、投げ銭実施者は利用するライブ配信アプリをある程度固定しており、かつ、よく視聴していることがわかった(図表2)。