投げ銭実施者は消費に意欲的
次に、投げ銭実施者の消費意識について見てみる。図表5は投げ銭実施者と全体を比較した際の差が大きい項目を取り上げたグラフである。

“投げ銭”という新しい課金システムを活用していることもあり、投げ銭実施者は「先進性の高いものに惹かれる」という項目において全体との差が大きく、ゆえに「自分は一度はまると結構のめり込むタイプだと思う」「流行やトレンドに敏感なほうだ」という面も高く反応している。“投げ銭”はライブ配信で活用されやすいものでもあるため、ライブの盛り上がりに合わせて自分自身も盛り上がることができる、のめり込めるという面は必要な要素といえる。一方で、「自分は熱しやすく冷めやすいタイプだと思う」という面も見られ、冷静な一面も垣間見える。
また、投げ銭実施者は「次から次へと欲しいものが出てきて困る」「新商品が出ると情報をチェックせずにはいられない」などの傾向が強いことからもわかる通り、新商品・新サービスにも精通している傾向があり「仲間から意見を求められたり、相談されることがよくある」「良いと思ったものは、思わず他人にも勧めたくなってしまう」という面も見られる。
しかし、「自分の発言や行動の真意が周囲の人になかなか伝わらないことが多い」ことも起きており、「周囲の人と比べて、自分が浮いていないかいつも気になる」「一度ふさぎこむと、その気持ちを長くひきずってしまうほうだと思う」という、他人とのコミュニケーションに苦労している面も見受けられる。
次に購買行動について全体と比較した結果が図表6である。

投げ銭実施者の特徴としては、「ある程度の品質を維持するには、それなりの価格が必要だと思う」と回答する人が投げ銭実施者全体の7割強を占めており、自分が求めるものを手に入れるには出費も厭わないという考えである。また、「これだ、と思う商品に出会ったら、迷わず購入することがよくある」という意識もこの層の特徴として見られることから、「ここでしか手に入らない」という気持ちが高まると投げ銭額(支払額)も比例して上がりやすくなっているのではないかと思われる。
そのほか、「一度使って気に入った商品は同じシリーズやその会社の別商品を購入する」「これだ、と思って衝動買いした商品の中には、意外と失敗は少ないように思う」という意識も強く、一度、ファンになると固定化しやすい特徴も見られる。これは「○○推し」というアイドルを応援する要素にも似ており、投げ銭がユーザーのファン心をつかむシステムにうまくはまっていることがうかがえる。
コロナ禍で集会・イベント等が中止となり、好きな飲食店にも行きにくくなった中で、自分が応援したい人・グループ・モノに対して課金という形で支援できる仕組みというのは、応援する側にとってはその場がコミュニケーションの一つになると思われるし、開催者側(ライバー)にとっても収益源となるため非常にありがたいサービスである。しかし、投げ銭実施者は過熱しやすい一面を持っており、その場の盛り上がりから想定以上の高額出費になってしまうケースも起きているのではないかと予想される。
20代以下の若年層が多いことも投げ銭実施者の特徴であるため、通常の買い物と同様、自分の支払い限度額を理解した上で活用してもらうよう注意を促すことが必要であり、開催者側(ライバー)からもある程度の注意喚起をした上で活用してもらう必要があるのが「投げ銭」というシステムではないかと考える。
【ブランドデータバンク調査概要】
調査主体:株式会社マクロミル
調査方法:インターネット調査
調査タイトル:ブランドデータバンク第33期調査「ブランドに関するアンケート」
調査対象:全国15歳~69歳の男女(マクロミルリサーチパネル)
割付方法:
10代:調査対象の出現比率に基づき、男女×年齢(15~19歳)で割付
20代~60代:平成27年国勢調査による、性別×年代(10歳刻み)の人口動態割付
総サンプル数:n=31,197
調査期間:2021年7月30日(金)~2021年8月10日(火)
サービスリンク:https://www.branddatabank.com/【A-cube(スマホアプリログデータ)概要】
調査主体:株式会社マクロミル
調査対象:全国15歳~69歳の男女、Androidデバイスを保有するスマートフォンアプリモニタ(マクロミルリサーチパネル)
調査方法:スマートデバイスのアプリケーション利用ログを収集
調査時期:2021年1月1日(金)~2021年7月31日(土)
有効者数:n=57,119(2021年7月時点 ※各月変動)
割付補正:マクロミルが独自に推計するスマートデバイスインターネット利用人口にウェイトバックし集計
サービスリンク:https://www.macromill.com/s/lp/service/a-cube.html・本文の数値は四捨五入した整数で表記しています。
・百分率表示は四捨五入の丸め計算を行っており、合計が100%とならない場合があります。