「おいしく、お得」な事実はあるのに伝わっていない
MZ:特に注力していたのは、どのあたりでしょうか?
足立:この5つは「ファミマをこんなふうに思ってほしい」イメージで、どれも大事です。強いて言うと、以前から訴求してきた「おいしさ」と「お得」がお客様にあまり伝わっていなかったので、しっかり訴求していきたいと考えていました。
あわせて、いずれの企画も発信していくときに「楽しく、お茶目」なトーン&マナーを意識しました。過去のいろいろな広告を見ても、ファミマの広告はどれもとても楽しくて、茶目っ気や愛嬌があります。そのイメージは皆さんにある程度は根付いているので、どの企画でも踏襲していきました。
MZ:では、具体的にどういった企画を展開されていたか、いくつか紹介頂けますか?
足立:チキン、スイーツ、フラッペ、カレーと本当にたくさんあったので選び難いですが、最初の企画となったクリスピーチキンの新発売は印象深いですね。ファミチキに次ぐ定番にしたいと考えて第一弾に据えたもので、1年経って狙い通り定着しています。

足立:2番目の「ファミマのボトルキープ」サービスも、驚きをもって楽しんで頂いたと思います。対象のペットボトル商品を24本まとめて買うと相当お得になるもので、ヒントになったのはECの“ペットボトルの箱買い”なんですね。ECと同じような価格なら、家でまとめて受け取って、家から持ち運ばなくても、毎日ファミマからピックアップできれば便利だろうと。しかも、24本同じものを買うのではなく、毎日違うドリンクを選べますから。
実は「回数券」と言ってしまえばそれまでですが、それではおもしろみがありません。そこで、普通は飲み屋で使われる「ボトルキープ」という言葉でインパクトを出しました。
光の当て方次第で、企画がニュースになっていく
MZ:確かに、回数券だとなじみがあるので話題にならなさそうです。光の当て方次第、ということですね。
足立:そうですね。もちろん、たとえば複数の商品を40%増にした38番目の「お値段そのまま40%増量作戦」など、企画自体に新規性があるものも多かったですが、伝え方の工夫で訴求効果を引き上げられたものもたくさんあります。ボトルキープは反響も大きかったので、社内にも早い段階で成功事例を提示でき、キャンペーンへの理解を得ることができたと思います。
加藤:私もボトルキープは印象的でした。制作物としては店頭ツールとWebページくらいなのですが、「どうやったらインパクトがあり、キャッチーに伝わるか」を考えたネーミングや、それを演出する店内の見せ方などを提案して実現する活動に、実はエージェンシーのアイデンティティがあるように思いました。
アイデアと見せ方で、人の心が動いて行動につながり、それがニュースになっていくという視点に初期に気づくことができました。
本田:私はひとつ挙げるなら、57番目の「おうちでファミチキセット」ですね。他社さんの企画も含めて規模も切り口も違う企画がどんどん走っていたので、私たちも発想の幅を広げていろいろな案をお出ししたのですが、これに関しては実は、提案しながら8割方は実現しないだろうと思っていたんです。すみません(笑)。

足立:確かに難易度は高かったと思います(笑)。ファミマの店頭で実際に使っている揚げ油を製品化し、冷凍ファミチキとセットにして販売する取り組みだったので。
