カレーパンには嗜好品としてのマーケティング戦略がある
高橋:2020年8月にオープンされたカレーパン専門店の「カレーパンだ。」は、ネーミングはそのままですね。
岸本:食パンが実用品だとしたらカレーパンは嗜好品だと思ったので、食パンとはまったく別の切り口で展開することにしたためです。
カレーパンって、我が社のデータで見ても絶対に売れるパンの上位に必ず入っているのに、包む手間などがあるからか、専門店として繁盛しているところはなかったんですね。
それでも、具をグリーンカレーにするなど、生地と中身の組み合わせが無限大で汎用性がある上、コロナ禍で在宅ワークをしながらワンフィンガーで食べられる手軽さにもニーズがあって、意外とブルーオーシャンだったんですよ。
それで、専門店を通してカレーパンを楽しむカルチャーを作りたいと思い、「カレーパンだ。」というブランドを立ち上げました。ただ、食パンほど日常性はないため、存在を広めるにはダイレクトなネーミングが良いだろうと思ってこの名前にしました。

岸本拓也(きしもと・たくや)
1975年生まれ。神奈川県出身。ジャパンベーカリーマーケティング株式会社代表取締役社長。「考えた人すごいわ」「どんだけ自己中」など、個性的な店名と奇抜なデザインの高級食パン専門店をプロデュースした、食パンブームの立役者。2020年8月にはカレーパン専門店「カレーパンだ。」をリリース。
早めの投資回収を見据えた出店戦略
高橋:なるほど。確かにカレーパン専門店は見たことがありません。潜在的な消費者ニーズが見えているマーケットなのに専門店がなかったのは意外ですね。ただそうなると、出店する立地なども食パン専門店とは変わってきますか?
岸本:そうですね。「カレーパンだ。」は4~5坪ほどあればできるので、一時のブームが去ったために潰れてしまったタピオカドリンクのお店の居抜きなどが良いと思っています。4~5坪だと建築費用もあまりかかりませんし。
食パンの場合は長期の投資回収を目指すので、イニシャルコストに7,000万円近くかけた店舗もありますが、カレーパンの場合は嗜好品ということで、投資回収のしやすさも念頭に置く必要があると思っています。その点から、食パンのように1つの町に1つではなく、札幌に1店舗、大阪に1店舗、と人が多く集まるエリアを中心に、商圏を広くとるようにしていますね。

高橋:アレンジがしやすい点や、投資回収がすぐできるという点でも、カレーパンはビジネス的に非常に良い商材と言えますね。食パン専門店でも一緒に販売するなども検討できるでしょうし、可能性が広がりそうに思います。
岸本:まさに、食パン専門店に最近、カレーパンも置き始めたんですよ。食パン専門店のオーナーさんからの問い合わせも多いですね。この先、揚げているところを見てもらう店舗の作り、冷凍で発送するサービスなど、まだまだ可能性が広げられると感じています。