スイーツブームを生み出すためのターゲット設定
——スイーツと他の商品のブームの成り立ちに違いはありますか?
金森:スイーツも自動車もハッキリとした違いはありません。どちらもエベレット・M・ロジャースが提唱した“イノベーター理論”から説明できます。1番最初は人口の2%くらいの“変な人(イノベーター)”が利用するところから始まり、約13%の“オピニオンリーダー”が普及させ、次にアーリーマジョリティ、レイトマジョリティに広まってブームになります。味覚には個人差が出やすいため、継続購入につながらずにブームが早々に去るなど、スピード感に多少の違いは見られますが、ブームの成り立ち自体に大きな違いはありません。
——食品メーカーやコンビニ各社としては、大衆ではなく、イノベーターやオピニオンリーダーをターゲットにしたほうが良いのですか?
金森:商材によって戦略が異なります。食料品はせいぜい数百円なので、手を出しやすく、仮に美味しくなくても今後買わなければ良いだけ。わざわざオピニオンリーダーの発信に耳を傾ける必要はありません。スイーツに関してはオピニオンリーダーよりも大衆に向けたほうが得策です。
一方、自動車メーカーの場合、SNS上で車に関する発信をしているオピニオンリーダーを集めた新作発表会を開催しています。自動車の良し悪しは簡単にはわかりませんし、気軽に手を出せる金額ではありません。オピニオンリーダーから発せられる意見や情報を判断材料にする消費者は多いです。自動車のような高価かつ長期的な利用が想定される商品・サービスは、オピニオンリーダーにまずは気に入ってもらうことが重要になります。
写真・動画で“映え”を狙う

——規則性はない、大衆を狙う、となるとターゲティングが難しいです。それでもブームなるスイーツをリリースするために必要な要素は何ですか?
金森:やはり、いつの時代もブームを作るのは若い女性であり、とりわけスイーツでは若い女性を意識しなければいけません。私は女子大で指導していますが、学生に「どのような基準で商品を選ぶのか」を聞くと、「映えるかどうか」という視点を非常に重視しています。マリトッツォはビジュアルのインパクトが強いことがブームにつながったため、いかに“映え”を魅せるかがポイントになるのではないでしょうか。
スイーツブームはSNS上の写真が発信源になりましたが、今後はTikTokがブームの火付け役になるでしょう。動画でいかに映えさせるか、シズル感を出せるかがブームの鍵になってくるため、企業は柔軟に戦略をシフトしなければいけません。