日本企業が取り組むSDGsの現状
SDGsへの関心が高まる中、企業がSDGsに関する自社の取り組みを公表することも増えてきた。SDGsは2030年に向けて掲げられた目標であるが、現時点において、日本企業のSDGsに関する取り組みはどのくらい進んでいるのだろうか。
企業ブランディングのコンサルテーションなどの事業を行う揚羽の黒田天兵氏は、「日本でもSDGsに対する『重要性』の認知・理解は進んだものの、『緊急性』を感じている企業は少なく、大半が行動に移せていないことから、変化も一部でしか起きていないのが現状」と指摘する。
「日本において、企業がSDGs活動をしていることをアピールする統合報告書の発行は500社程度を誇り、これは世界トップクラスとも言えます。しかし残念ながら、実行プロセスまで書かれているレポートはわずか5%程度で、活動実態が見えづらいものが大半です。ステークホルダーに自社のSDGs活動をきちんと伝えるためには、プロセスやステータスがより鮮明に伝わるように、動画やウェブページなどを使い、統合報告書をより立体的に表現していく必要があります」(黒田氏)
また企業人材育成セミナーなどの事業を行うウィル・シードの小林陶哉氏は、日本企業は海外企業と比べて、特に社員がSDGsを「自分ごと化」できていないのではないかという。背景にあるのは「個人では共感できるが、仕事につながらない」「SDGs理解のネクストアクションがわからない」といった悩みだ。
これからの消費の中心「Z世代」はSDGsをどう捉えているか?
アフターSDGsの2030年、つまり10年後を見据えたとき、時代の主役となるのはZ世代と呼ばれる世代だ。メディアでは“意識高い系”、“社会を良くする企業を選ぶ”、そんなイメージが語られがちで、SDGsやサステナビリティ、エコに関心が高いと言われているが、果たしてそれは真実なのだろうか?
Z世代も含めた若者研究を行っている原田氏は、「SDGsに関心を示して活動しているごく一部の若者だけを見て、若者はSDGsに関心があると思いこんでいる大人が多すぎます」と指摘する。
「メディアも平気で『今の若者はSDGsへの意識が高い』と発信していますが、実際のところ、意識が高いのはごく一部で、Z世代の多くはちょっとおしゃれでエコな商品を、『高くないなら、まあ買ってもいいかな』くらいの感覚が普通です。でも『+エコ』がなくてもおしゃれなら買うと思うので、純粋にエコによる消費というのは、まったく若者世代でも起こっていません。
ただ、長期的に見れば日本でも世界と同じように関心は高まっていくでしょう。Z世代の次の『α(アルファ)世代』に期待できるのではないかと勝手に予測しております。まず、今の実態を正しく理解して、企業が教育していく姿勢を示して若者を巻き込んでいかないといけないと思います」(原田氏)