ビジネスの入口がゲームの可能性
サティア・ナデラCEOの思惑は、Microsoftの旧来のB2Bビジネスのイメージからさらに進化して、1.クラウド、2.(メタバース上を含む)コンテンツ、3.クリエイティブ(エンジニア)を柱として推し進めることにあり、過去に大きな投資をした「検索」や「モバイル」の領域は話題に上がっていない。さらに、ナデラCEOは「メタバース」の世界での事業柱として「ゲーム」分野と「事業オフィス(会議ソフト)」分野の2つを掲げている。
王者Microsoftが仕掛けた今回の買収の解釈として、「ゲーム業界でのランキング上昇」や「ゲームシリーズの品ぞろえの拡充」程度の、ゲームを中心とした事業の解釈では非常に狭く、物足りない。クラウドとセットで「ハイブリッド・ワーク」のスタンダードになる戦略と考えるほうがしっくりくる。
たとえば、メタバースの世界は、没入すると「ゲームをしているのか」それとも「事業戦略や会議を進行させているのか」の境目も薄くなる。「自宅と会社のリアル環境」から「それ以外の時間(余暇・観光・レジャー・ゲーム)」へMicrosoft(やFacebook/Meta)が参入することで垣根が薄れ、「ゲームプラットフォームと思っていたら、そこが仕事場(=Microsoftの強い領域)になった」という広がりは、既に存在している。
「Decentralized Autonomous(自律分散型)」や「メタバース」「Web3の空間」などのキーワードとともに「ゲーム」が突破口となり、「仕事(場)の概念が広がる」と考えてみる。「ゲームと仕事」「プライベートと仕事」といった境目が今後薄れてくることに先回りするのは、その後ろに広がっているMicrosoftの牙城(オフィス/クラウド)のためにも、入口(ゲーム)は押さえておきたい。
Microsoftが8兆円近くにまで引き上げたM&Aのハードルは、金額の上限に近づいた。「新Walled Garden」の意味合いは、単なる囲い込みではなく、境目なく広がる環境での「スタンダード」の位置取り合戦だ。
※ 買収金額は全て当時のドル金額を1ドル=110円で換算