企業が感じる3つの限界と対応
――様々な課題から、変化したくとも足踏みする企業もあると思います。どうすれば前に進めるのでしょうか。
永井氏:「変化への適応」という視点で、マーケティングアプローチにおいて、自社が感じている課題や限界を明確にしなければなりません。弊社に相談に来られる企業の多くはコミュニケーション、エンゲージメント、イノベーションの3点で既存の方法に限界を感じており、CRMなどのテクノロジーを活用して効率化し、競争優位を築きたいと考えています。
まず、コミュニケーションについてです。
たとえば、顧客とのコミュニケーションにおいて、コールセンターが重要なチャネルであることは周知の事実です。しかし、顧客セグメントによっては、Webサイト上でのチャットのほうが、効果が見込めるアプローチがあるかもしれません。ちょっとしたお知らせであればLINEで友だちとして繋がって発信することも当たり前になりました。顧客と繋がるチャネルの多様化・複雑化を捉えつつ、チャネルの特性を踏まえ、顧客が望むコミュニケーション手段の在り方を再定義する必要があります。
次に、エンゲージメントについてです。
顧客やユーザーとの関係性を維持するには、もはや、デジタルとリアルのアプローチの融合が不可欠です。
CRMはデータドリブンな観点で、効率的に顧客と繋がり、関係性を維持・強化するために有効です。また、MAは、適切な顧客に、適切なタイミングで、One to Oneのアプローチでメッセージを配信し、顧客の態度変容を促すソリューションです。従って、顧客とのエンゲージメントを高める視点で、テクノロジー・データの活用が差別化のポイントとなります。成長している企業では、コロナ禍であるからこそ、デジタルを活用した顧客との物理的な距離を埋める取り組みや、これまでアプローチできていない顧客へのアプローチの強化が加速しています。
最後に、イノベーションについてですが、デジタル施策の利点をビジネスチャンスに活かせているかどうかがポイントになります。デジタル化の大きなメリットとして顧客への素早いアプローチとデータに基づく顧客の反応捕捉が可能になる点があります。施策の反応がすぐわかるようになりますし、最適化もやりやすくなります。場合によってはデータ分析から兆候を捉え、未来を予測するなどサービス自体の在り方も変えていけます。
ただし、現実的には、デジタルに振り切る企業は少なく、リアルをベースにデジタルを融合させたい、デジタルでしかできないことを取り入れたいという要望が大半です。分断ではなく融合の視点で、リアルとデジタル双方の価値の最大化を目指すことが重要です。