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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

MarkeZine Day 2022 Spring

「一期一会の商売からリテンションビジネスへ」三越伊勢丹のリモート接客に学ぶ、デジタル推進の勝ち筋

百貨店ならではの顧客体験をオンラインでも

 MIRSの実際の効果について、升森氏は「高額品はきちんと相談して買いたいというニーズから、宝飾時計雑貨が売上の3割以上」と説明。また、店頭ではつながりづらい50歳以下の顧客がMIRSでは約8割を占める。若い顧客との接点としても貴重だ。

 利用状況としてはチャット接客がほとんどを占め、ビデオ通話での接客は3%と当初の仮説とは異なる結果。しかしビデオ接客自体は一定の手順や時間が必要になるため、「これはこれで良かったのでは」と升森氏は評価した。

 リモート接客が顧客体験の向上につながった事例もいくつか紹介された。一つ目は、店頭の顧客とオンラインでつながることで、要望の商品を後からチャットで案内した事例。「店頭接客では1回お断りしてしまうとわざわざお電話するのは難しく、ECはそれもできない。チャットでの接客ならではの顧客体験」だと升森氏。また、ECでは取り扱いの少ない生花の問い合わせから、リモートでの丁寧な接客の結果リピートにつながった事例も紹介。百貨店での買い物の魅力である、店員の人間力が満足度の高い顧客体験を実現した事例だ。

 また、店頭で人気ブランドのポップアップイベントをやる際に、SNSでの告知にMIRSへの導線を貼ることで、遠方在住等で店舗に行けない人も購買が可能になる。アンケートの回答の内容から、その顧客に合ったワインをソムリエが選び、サブスクリプションで届ける施策も好評だった。このように、勝ち筋の施策が生まれ始めている

デジタル推進を支える縦横のコミュニケーション

 成果を見ると、デジタルの導入・運用の全てが順調に進んでいるように見えるが「課題も山積している」と升森氏は振り返る。

 現場で施策を増やすにつれ「こんなツールが欲しい」という要望も増えるが、開発側とのコミュニケーション不足のため現場の要望を反映しきれていないツールができてしまう。「継続的なコミュニケーション不足に起因する課題が発生していました。一般的によくある課題だと思うが当社でもあった」と升森氏。

 そこで意識したのが、現場とシステム開発の間のデジタルサービス運営部(升森氏のチーム)が橋渡し役になること。現場からツールが欲しいといわれた際「それで何をやりたいのか」を確認し、既存のツールなどで試してから、必要であれば開発を開始する流れが理想的だとした。

 「いきなり開発して失敗してしまうともう後戻りできない。まずはやりたいことが何なのか確認した上で、小さく運用をしてみることが重要です」(升森氏)

 こうして升森氏のチームが各店舗のスタッフと日々コミュニケーションを取りながら、開発チームではスクラム体制のアジャイル開発で毎週リリースを行っているという。

 さらにアジャイル開発においてはスピードが鍵で、意思決定者との縦のコミュニケーションも重要だ。そこで升森氏のチームと開発者、意思決定者である役員の三者で毎週会議をしているという。それも、アイデア段階の意見を交換しリリースの進捗や効果を共有するカジュアルなもの。こうすることで全体の認識齟齬を避け、スピーディな意思決定とリリースにつながっているという。

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デジタルは「大変」という現場の声に向き合う

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この記事の著者

尾高 志保(オダカ シホ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/28 09:00 https://markezine.jp/article/detail/38805

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