
“ポジティブな影響”の最大化
本稿では、データ倫理とは何か、そして自社のサービス開発やマーケティング施策における“ネガティブな影響”のリスクを考える必要性を説明してきたが、“ネガティブな影響”とともに“ポジティブな影響”を考えることもData Ethics Canvasでは重要なトピックである。“ネガティブな影響”については、個⼈情報やパーソナルデータの収集・利活用が伴うサービスや事業を開始する際に、事前に個人の権利利益を侵害するリスクを特定し評価する手法である「プライバシー影響評価(PIA:Privacy Impact Assessment)」でも同様に重要とされているが、データを活用するからこそ実現できるユーザーへの便益といった“ポジティブな影響”を考えることについては考慮されていない。
ユーザーは、プライバシーリスクと享受できる便益を天秤にかけ、便益がリスクを上回ると判断した時にデータ提供の意志を示すため、一方だけではなく双方の影響を考えることこそが重要である。ユーザーからデータを集める際、その利用目的は自社のためだけではなく、データ主体であるユーザーのためでもあるはずで、“ネガティブな影響の最小化”とともに“ポジティブな影響の最大化”を考え、それをどのようにユーザーに伝えることで、ユーザーから能動的にデータを提供してもらえる関係を構築できるのか、ぜひ身近な事例をもとに考えてみてはいかがだろうか。