SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

生活者データバンク

マーケターに求められる「データ倫理」

欧州を中心としたデータ倫理に関する取り組み

 GDPRが施行された2018年以降、欧州を中心にデータ倫理に関する取り組みが各国で進んでいる。データ倫理の中でも、特に差別などを助長する可能性のあるプロファイリングなどを規制するためのAIに関する倫理が先行しており、2019年には欧州委員会が「信頼できるAIのための倫理ガイドライン」を公表。これを参考にポリシーやルールを策定する企業が世界中で増え、日本でも富士通やNEC、ソニーなどのグローバル企業がAI倫理に関するポリシーやガイドラインを定めている。

 AIに限らず、データを取り扱うあらゆるケースにおける倫理原則の公表を義務付ける国も出てきている。デンマークでは2019年に、企業がデータ倫理をビジネスに採用・実装するのをサポートするためのデータ倫理ツールボックスを政府機関が公表した。2020年にはデンマーク財務諸表法の改正案が可決され、2021年以降、一定規模以上の大企業および上場企業は年次報告書においてデータ倫理に関する方針を公表するか、方針がない場合はその理由を公表しなければならなくなった。

マーケターが考慮するべきデータ倫理

 これらは主に経営層が検討するべき事項であるが、現場の担当者がデータ倫理を自分ゴト化し、自社のサービス開発やマーケティング施策に適応させるには、どのような取り組みが必要なのだろうか。

 アドテクノロジーの発展にともなって容易にデータを集め精緻なターゲティングができるようになった結果、個人が想定していないようなデータの連携やプロファイリングなどの利活用が行われ、企業にとってはその個人のためにと考えたものであっても、その個人にとっては不快感を覚えてしまう場合がある。他のケースとして、データ主体とデータ利用者が異なるといったステークホルダーが複数いる際に、一方にはベネフィットがあっても他方にネガティブな影響を与える場合もあり、公平性の視点を持ちそれぞれの立場に立って影響を考える必要がある。

 このようにデータを利用した新しいプロジェクトに取り組む際に、自身の認知バイアスを疑い俯瞰的に問題の有無をチェックする必要があり、それを支援するためのツールも徐々に出始めている。英Open Data Instituteは、倫理的な問題を特定し管理するためのツール「Data Ethics Canvas(※1)」を公開し、時勢に合わせ毎年バージョンアップを実施している(図表2)

図表2 Data Ethics Canvas(Open Data Instituteの資料をもとに筆者が和訳)(タップで画像拡大)
図表2 Data Ethics Canvas(Open Data Instituteの資料をもとに筆者が和訳)(タップで画像拡大)

 このツールはプロジェクトの規模に関係なく利用することができる。そのため、プロジェクトの影響を受ける可能性のある様々な立場の人を可能な限り巻き込み、その内容とアクションプランを広く共有し、プロジェクトの開始時から終了時まで定期的に進捗確認と見直しによる更新を行うことで、潜在的なリスクを最小限に抑えることができる。

 ワークショップなどにおいて、このCanvasの各セクションに用意されている質問(図表3)の回答をまずは個人で考え、その後グループに共有して議論を行う。これにより、そのプロジェクトの課題とその解決に向けた個人および組織としてのアクションが明確になっていく。

次のページ
“ポジティブな影響”の最大化

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
生活者データバンク連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

伊藤 直之(イトウ ナオユキ)

株式会社インテージ 事業開発本部 先端技術部 エバンジェリスト

2008年、インテージに入社。 クライアント企業の社内外データ利活用基盤構築やマーケティングリサーチ、デジタルマーケティング領域での新規事業開発に従事した後、現在は主に個人起点のパーソナルデータ流通領域における啓蒙・啓発活動や、「情報銀行・PDS」...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2022/04/27 07:30 https://markezine.jp/article/detail/38848

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング