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米国最新事情レポート『BICP MAD MAN Report』

「データ越境移転」の制限 Facebook/Instagram欧州撤退の可能性

次元が異なる、Yahoo! JAPANとMetaの撤退理由

 参考までに、Yahoo! JAPANの撤退理由はDSRの目線を含んだ「データ保有コスト」が「事業の割に合わない」という点が大きい。Zホールディングスという日本企業が欧州でデータの利活用事業を展開したとしても、実入りの割に対応すべきコストのほうが高くなる、という判断だ。言い換えれば、GAFAMがすでに対応済みの、ひと昔前の判断を、ようやく「日本判断で」行った事例とも言える。

 これに対してMetaの発表のマグニチュードが大きいとするのは、「越境データ移転」という国家・連邦間のやり取りに次元が膨らむからだ。2つのアナウンスを、同時期かつ、欧州発の個人権利の保護として「同じ原因(ルーツ)」と考えても良いのだが、マグマの度合いで考えると、さらに大きい部分が動き出した。

 以下は、Metaの年次報告書の原文とその翻訳である。

Meta Platforms, Inc. Form 10-KのP36部分)

 We believe a final decision in this inquiry may issue as early as the first half of 2022. If a new transatlantic data transfer framework is not adopted and we are unable to continue to rely on SCCs or rely upon other alternative means of data transfers from Europe to the United States, we will likely be unable to offer a number of our most significant products and services, including Facebook and Instagram, in Europe, which would materially and adversely affect our business, financial condition, and results of operations.

 この調査の最終決定は、早ければ2022年前半に発行される可能性があると考えています。もし、新しい大西洋横断データ移転のフレームワークが採用されず、当社がSCCs(標準的契約条項 ※2)に依存し続けられなくなったり、欧州から米国へのデータ移転の他の代替手段に頼ることもできなくなったりすると、当社はFacebookやInstagramを含む当社の最も重要な製品やサービスの多くを欧州で提供できなくなると考えられ、当社の事業、財務状況、業績に重大な悪影響を与える可能性があります。

 この年次報告をMetaの単体企業のものとして捉えず、MicrosoftやAlphabet、Amazon、Appleらの模範がどう準備中なのかの「予告編」も近々登場するはずだ。これら一連のデータに関する企業や国家の姿勢に対しては、結果の左右に関わらず注意を払っておきたい。

※1 GDPRは個人データの処理に関して、個人に「データの訂正や消去」「プロファイリングの閲覧」などのリクエスト権利を付与している。

※2 GDPRでは欧州内から日本を含む欧州外への個人データの移転は原則として違法とするが、この「SCC」が締結できれば、データの輸出者と輸入者との間で移転が「適法範囲内」と認められる。Metaは2021年にSCCに拒絶された判断が今回の引き金になっている。

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この記事の著者

榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/27 08:45 https://markezine.jp/article/detail/38849

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