どこにある!? シニアのデジタル利用を阻む落とし穴
続くパートでは木船氏から、この数年でシニアの間で進んだデジタルシフトを例に、自己認識と行動にどんなギャップがあったのか、それに対して取った解決の方向性について紹介がされた。

ハルメクでは頻繁にユーザー観察を行い、シニアのデジタルリテラシーを測定している。講演では、シニア女性のLINEの利用に関する定量・定性調査、ユーザーテストを事例に解説した。
定量調査から見てみると、「あなたはLINEを使いこなせていますか?」という問いに対し、「使いこなせている」「まあ使いこなせている」と回答した人は74.4%だった。この結果から、自己認識ではLINEを使いこなせていると感じているシニアが多いとうかがえる。
実際にスマホの利用画面を見せてもらうと、使いこなせている人は、よく利用するスーパーやドラッグストアなどの店舗から、飲料や食品メーカー、自治体などの公式アカウントは登録されている様子。あとは未読放置が少ないのが特徴として挙げられた。

つまずきポイントを押さえることで、デジタルマーケティングも展開可能
これだけ見ると、シニアもLINEを使いこなせているように見えるが、実際にどう使っているかを観察したところ、認識と行動のギャップが浮かび上がってきたと木船氏は言う。
ハルメクでは、ユーザーインタビュー時にお題を出している。このときは「QR読み込み→そこからLINE友達登録→会員登録→クーポンを獲得する」までをお題として提示した。
このフローで、8人を観察しながら見えたシニアのつまずきポイントが「LINE友達登録」「会員登録」にあった。
つまずきポイント1つ目の「LINE友達登録」について観察すると、QRの読み込みはほぼ全員できるが、認証画面を進んだのち、友達追加ボタンがわからずに登録できなかった人が8人中4人。講演では、実際シニアの方がどうやって友達登録を進め、どこでつまずいているのか映像が流された。
つまずきポイント2つ目、「会員登録」は、フォーム入力が鬼門として立ちはだかっていた。「若年層が30秒程度で終了する作業が、おおむね4~5倍、10倍の時間がかかってしまうことは結構多い」と木船氏は説明した。
また同氏は、シニアのフォーム入力中によく起きる問題として次の4項目を挙げた。
1.郵便番号のハイフンが超苦手(アンダーバーや他記号を入力してしまう)
2.大文字・小文字変換
3.パスワード入力(英数字切り替え、記号組み合わせが苦手)
4.電話番号2は「なし」やFaxなどは「同上」などと漢字を入れてしまう場合がある
シニアにフォーカスしたデジタルマーケティング施策を行う上で、デジタルネイティブ層とは異なる、そうした“あるある”をしっかりおさえる必要があると木船氏と指摘し、セッションを締めくくった。
「ユーザー観察では、入力未完了で何度も行き来し、パスワード入力でかなり苦戦される様子が見られました。これに対して考えられる企業の対応の方向性として、まずはEFO(入力フォーム最適化)で、できる限り丁寧に対処すること。それと紙の説明用紙やコールセンターなど、オフラインで支援してあげるのがベストだと思われます」(木船氏)