5つのメリットが得られる理由を解説
多くの企業では、広報活動として、自社の事業の動きやトップの考え方などをオウンドメディアやSNS、取材などを通して世の中に広く発信していきます。その大きな目的は、自社の存在や存在意義(価値観や強み)をターゲットに認知・理解してもらうことです。
そのため、広報活動から得られるメリットとして、「認知拡大、ブランディング」に関してはイメージがしやすいと思います。しかし、これだけにとどまりません。
「新たなユーザー、市場の開拓」「パートナー企業の獲得」のように、自社の事業に直結したメリットも期待できます。自社の存在や強みを潜在顧客などに認知、理解してもらうことで、“相手に自社を見つけてもらえる”効果が生まれるためです。これは後ほど実例を使って説明します。
また、「資金調達」に対するメリットもあります。将来が有望と考えられるスタートアップは、資金調達前から取材で取り上げられることが少なくありません。自社から働きかけることで取材につながることもあるでしょう。
この際、資金調達を目指す企業にとっては、権威ある経済メディアにどれほど取り上げられているのか(どう評価されているのか)は、自社のポテンシャルを証明する客観的な指標として活用することができます。
また、「採用」に関しては、もはや広報活動は欠かせない要素です。商品だけで差別化できる時代が終わり、働き方に対する人々の価値観が多様化する中、求職者は雇用条件に加えて「企業が持つ価値観」まで重視するようになっています。
求人情報の掲載だけではなく、広報活動によって「なぜそれをするのか」という価値観に関わる情報までしっかりと発信することで、価値観の合う優秀な人材が会社に集まりやすくなります。
上記のように、広報活動のメリットは様々なものが挙げられます。この中でも、マーケターの皆さんの関心が高い「新たなユーザー、市場の開拓」「パートナー企業の獲得」について、実例を紹介したいと思います。
広報活動がビジネス拡大につながった事例
博報堂グループのスパイスボックスは、2021年10月に新しい子会社を設立しました。
スパイスボックスでは、2016年頃から業界に先駆けてSNSデータを活用したブランディングやマーケティング支援サービスを開発し、広報活動をスタートさせました。
ここから数年かけて、これらのサービスを様々なマーケティング専門メディアや経済メディアで取り上げてもらえるよう情報発信を続けました。そして徐々に、ターゲットである大企業のマーケティング部門に“サービスの強み”が認識される状況を作り出していったのです。
その後、このサービスを知った某大手企業のA社から「この仕組み(SNSデータを活用したマーケティング施策の仕組み)を採用広報に活かせないか?」と問い合わせが寄せられました。
この問い合わせがきっかけとなり、スパイスボックスはA社に対するSNSデータを使った採用マーケティング支援を開始します。その取り組みが成功すると今度はA社の成功事例を活用した広報活動を展開し、さらに顧客を増やしました。
まさに広報活動によってA社に“見つけてもらう”ことからはじまった取り組みで、最終的には事業部の設立から子会社No Companyの設立(2021年10月)まで漕ぎつけました。
この流れをまとめると、以下のようなステップになります。

もちろん、いくら広報活動を積極的に行っても、サービスの中身がともなわないと結果が出ることはありません。広報活動が成果の1つのきっかけとなった形です。
この例からわかることは、広報活動によって、“相手に見つけてもらえる効果”が得られること、相手に見つけてもらうことで自社からの働きかけだけでは得られないビジネスチャンスを掴める可能性が高まるということです。
子会社設立とまでいかなくても、「〇〇分野と言えばこの会社」と言われるような存在になれれば、その分野でビジネスをしたい、投資したい、働きたい、と考える企業や人材との縁が生まれやすくなります。
個人的には、長年の企業広報、広報支援経験から、こうした例(外からの問い合わせがきっかけでプロジェクトや事業がはじまった)はたくさんあっても社外に出にくいと思っています。それは、経営者が「自分たちが戦略的に考えてはじめたこと」という風に見せたいからなのかもしれません。今回は許可をいただいて、筆者が広報担当だった古巣の事例をご紹介しました。
