社員5人のスタートアップに広報担当がいる時代
ここ数年、スタートアップや中小企業が、広報活動に力を入れるようになってきました。昔は東証一部上場などの大企業のものだったのになぜでしょうか?
大きな理由としては2つ挙げられます。1つ目は、Webメディアの拡大やSNSなどの浸透によって、中小企業やスタートアップでもマスに向けた情報発信を手軽にできるようになったことです。
テレビや新聞、雑誌が主流だった時代は、小さな会社の情報を取り上げるメディアの数がそもそも限られていました。今ではWebメディアの拡大によって、ニッチな領域の小さな会社でもメディアに取り上げられる可能性があります。また、SNSを活用することで、様々な情報を直接、潜在顧客や求職者などのターゲットに届けることもできます。
2つ目は、広報活動が売り上げなどにも直結するようになってきたこと、あるいは直結していることが「わかる」ようになってきたことです。
多くの場合、過去に大企業が行っていた広報活動の目的は、いわゆるブランディングや危機管理広報が中心でした。それは、広報活動が売り上げなどの成果に貢献しているかどうか測定しようがない部分があったためです。
しかし、今では様々な情報発信がデジタル化され、その成果をデータで追うことができます。情報発信が手軽にできること、広報活動が売り上げにも貢献し得ると考えられるようになったことが、スタートアップや中小企業の大きな後押しとなっています。
実際に、広報部の立ち上げ支援をしている筆者の所には、社員が5名ほどのスタートアップからもコンサルティング支援の相談が寄せられます。
おそらくマーケティング活動を一切しない会社はありませんが、広報活動に関しては、熱心に取り組む会社とそうでない会社と様々です。その意味では、広報活動をする会社としない会社の差は開くばかり。どちらかと言うと、広報活動をしないことがリスクの時代になったと言えるかもしれません。
広報活動によって得られるビジネス上のメリットとは何か?
先ほど、広報活動の成果が見えやすくなってきたとお話ししましたが、では、広報活動によって得られるビジネス上のメリットとは具体的にどんなものが挙げられるのでしょうか?
このメリットを考える上で、前提としてお伝えしたいのが、そもそもの「広報の定義」についてです。ときどき、「広報=メディア掲載を獲得する活動」と捉えている方がいます。しかし、それは広報の仕事の一部でしかありません。
米国でPRの教科書と評される『Effective Public Relations』(邦題:体系 パブリック・リレーションズ)では、広報活動を「組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持するマネジメント機能」と定義しています。
つまり、メディアなど自社を取り巻く様々なステークホルダーと良好な関係性を作り、それを企業成長につなげるのが広報の役割と言えます。
ステークホルダーとの関係構築を行う広報活動によって、社外への情報発信を行ったり、逆に外部の声を自社に取り込んだりすることで顧客など広く社会と適切なコミュニケーションを取っていくことが可能となります。
このことを踏まえた上で、広報活動によって得られるビジネス上のメリットを説明していきます。たとえば、広報活動によってステークホルダーに「自社の存在を知ってもらう」「強みを理解してもらう」ことによって、直接的、間接的に企業は以下のようなメリットを享受することができます。