データドリブンなサービスの拡大、広告枠の買い方にも変化
次に「サービス提供者」の変化について。昨今、テレビCMをデジタル広告と同じように運用する、あるいはテレビCMとデジタル広告をかけ合わせることで広告効果を高めていくためのサービスが続々と登場するなど、テレビマーケティングを支援するサービス提供者側は活況を呈しています。
変化としては、まずデータドリブンのサービス提供者が増えていることが挙げられます。データドリブンにも2パターンあり、ファーストパーティデータの活用で社内KPIの最大化を狙うやり方と、我々TVISION INSIGHTSのように、サードパーティデータを活用して認知の最大化を図る方法にわかれます。どちらがいいというわけではなく、目的に合わせてそれぞれの事例が増えてきている印象があります。
二つ目の変化は、広告枠の購買方法が多様化しているということ。テレビCMもデジタル広告のようにもっと柔軟に枠を買えるようにするべきといった議論は、これまでたびたび話題に上ってきましたが、なかなか歩みが早くなりませんでした。しかし最近アメリカではP&GのCMOが「昔ながらのやり方を変えるべきでは」と提言し業界をざわつかせており、テレビ(地上波)とCTVを組み合わせた枠の買い方も実際に増えています。
これからは日本でもバイイングの形が多様化していくと予想できるでしょう。SAS(Smart Ad Sales)の活用拡大もあわせてより柔軟になっていくと期待しています。
広告主の進化は一歩遅れ?そのわけは
最後に「広告主」の変化について。広告出稿主の変化は、これまで紹介した「視聴者」「サービス提供者」と比べてまだまだこれからという印象です。というのも、CTVを活用しきれていない広告主が多いのです。先述の通り、テレビでYouTubeを見る視聴者は年々増えています。これは広告主の方も視聴者として家庭などで実感していることでしょう。
アメリカではこの状況を鑑みて、テレビ(地上波)への出稿を10としたらCTVは2程度の規模まで拡大しています。しかし日本ではテレビ10に対してCTVはまだ0.15〜0.2程度しかありません。
この要因として大きいのは、「CTVへのスタンスを捉え切れていない」ことです。CTVは、今までの「テレビ=アナログ」「YouTube=デジタル」という単純な軸に当てはまらないため、デジタルと捉えるのかテレビと捉えるのかのスタンスが揺れていることで失敗に陥ってしまいます。たとえば、CTVの出稿時にデジタル広告と同様のスタンスでターゲットを絞りすぎると、打率は高いが消化しきれず、リーチが伸びないわけです。
デジタルの延長線上ではクリック率などの向上を目指す「効果最大化」、テレビの延長線上では「認知最大化」の目的が考えられますが、CTVの考え方としてはどちらかというとテレビの補完としてリーチを取りに行くのが効果的そうです。既にそれだけのリーチが取れるほどCTVが育ってきたとませんでした。しかし最近アメリカではP&GのCMOが「昔ながらのやり方を変えるべきでは」と提言し業界をざわつかせており、テレビ(地上波)とCTVを組み合わせた枠の買い方も実際に増えています。
これからは日本でもバイイングの形が多様化していくと予想できるでしょう。SAS(Smart Ad Sales)の活用拡大もあわせてより柔軟になっていくと期待しています。いうのも大きいですが、テレビというデバイスの強みはターゲット以外の幅広い層にも共視聴などでアプローチできる点。なので、潜在層や興味層を取り込む方向性で活用するのがよいと思います。
こうした認識の曖昧さによって、CTVへの投資額もテレビと比べてまだまだ少ないようです。テレビ広告は数億の予算で回しながら、CTVには数百万しかかけられていない企業も散見されます。新しい概念ゆえに小さく始めてPDCAを回しているつもりでも、それが小さすぎて回せていなかったら成果に結びつくのは難しいでしょう。このあたりも、広告主のキャッチアップが遅れている要因だと考えられます。
