SAS活用で生まれたのは「データに基づく仮説」だった
――SASを用いてターゲットベースのテレビCM出稿を行うということは、長年用いてきたGRPから指標を変えるということになります。出稿方法や広告指標を変えるというのは、社内外での調整が大変そうです。
志賀:そうですね。テレビCMを長く行われている広告主様の場合、すでに固まった運用方法や運用指標があります。それを変えていく必要があるので、なかなかにハードルが高いことも多く、やはり広告主様の企業体制や広告に対する意識が大きく影響してくるというのが正直なところです。しかし、特に売上への広告効果を重視されている企業様やご担当者様には、ターゲットへの接触を重視するマーケティング手法の価値をしっかり理解いただけることが多いですね。
巽:「P+C7(※3)の視聴率ベースで換算すると、SASは高いよね」という言葉をいただくこともあるのですが、SASはROIベースでCM枠を評価しているので、両者は単純に比較できるものではないのです。この仕組みをご理解いただけていないこともあり、わかりやすくご説明していかなければいけないと思っています。
荻生:SASにしかできないバイイングなので、両者を同列に扱うのは難しいですよね。テレビに限らず様々なコミュニケーションツールを扱う中で、届けたいターゲットに情報やメッセージをお届けすることがいかに難しいかは、日々痛感しています。ターゲットが定まっているのであれば、SASでしかできないことにむしろ価値を感じるのではないでしょうか。
――キッコーマン豆乳で、SASをどのように活用されているのか詳しく教えてください。
志賀:商品購買を最終CVにKGIを設計しています。現在は、新テレビCMのローンチにともなう認知拡大フェーズにあるので、ターゲットCPM、リーチ単価を指標に有効なCMポジションをSASでバイイングしています。ほかにも、商品の購買単価が高い視聴者を多く含有するCMポジションをバイイングする方法などもあり、マーケティングフェーズに応じて使い分けています。実際に、デモグラベースで評価する場合と、商品購買実績で評価する場合とでは、有効なCMポジションは大きく異なります。
また、効果検証については、GRPをimpあるいはCPMに換算し、デジタル広告と同じ指標を用いています。これにより、統一指標でデジタル広告とテレビ広告の投資対効果を見ることが可能になるので「このターゲット/このブランド・商品/この広告戦略のフェーズに適しているのは、この媒体」というように、媒体の役割が整理され、予算配分とスケジューリングが最適化されています。
荻生:特筆すべきは、仮説を持った上でテレビCMを投下できるようになったということです。これまでは「これだけの量を投下したのだから、自分たちのターゲットにも到達しているはずだ……」という風にモヤっとしていましたが、データをもとにターゲットと目的を定めて広告投下をするので、仮説とそれに対するフィードバックが得られるようになりました。また、仮説シミュレーション上では、ターゲットへのCM接触量が昨年の実績値から約3割増加しています。
テレビもデジタルも、広告を打った先には必ず何かしらのアクションが存在します。最終的には「商品の購入」を目指していますが、それ以外にも、Webサイトへの来訪やSNSでの発信など、デジタル上でもいろいろなアクションが起きているはずです。そういったデジタル上の変化も俯瞰で見ながら、テレビCMの効果検証を行っています。