※本記事は、2022年6月25日刊行の定期誌『MarkeZine』78号に掲載したものです。
パーパスドリブン経営を進める富士通。CMOに課せられたミッションは?
――山本さんは、日本Microsoftや日本IBMを経て、2020年4月に富士通にジョインされました。CMOとして山本さんに課せられたミッションは?
ひとことで言うと、「パーパスに基づくブランドの刷新」です。2019年に時田が社長に就任して以降、富士通はパーパスドリブンな経営に向けて強力に変革を進めてきました。富士通グループ全体で一つの目標に向かって変革を進めていく際、パーパスはその方向を示す北極星として必要なものです。私のミッションは、その向かっていく先をコーポレートアイデンティティとしてお客様へ伝えていくこと。つまり、企業や商品の存在意義を明確にして、その生み出す提供価値をより多くの方々に想起いただける状態を作ることにあります。
また、私が入った当時、富士通という会社に対するイメージは、世界中でそれぞれの人によって異なってしまっている状況でした。ですので、まずは富士通としてのコーポレートブランディングと、事業・製品のブランディングおよびマーケティングをつなげていく必要がありました。
――山本さんが入社した当時のマーケティング組織の課題は?
当時は、私が所属するグローバルマーケティング部門のチームと、各事業ブランドで販売促進を担当しているチームが分かれてしまっており、みんなで同じ方向を目指して動くことができていませんでした。
この分断による問題は大きく三つあります。一つは、各事業部が新しい製品・ソリューションを開発し、名称を決めて、マーケティング活動を行っていくので、“富士通のブランド”としての統一感がなくなってしまうということ。これでは、富士通のパーパスをお客様に示していくこともできません。
次に、各事業部で販売促進に従事している社員は、必ずしもコミュニケーションのプロとしてのスキルがあるわけではありません。たとえば、SNSで情報が拡散される時代に各事業部内でそれぞれ情報を発信してしまうと、炎上などのリスク回避が難しいという問題も出てきます。この時代に合った情報発信ができる組織体系になっていないということが二つ目の問題でした。
最後三つ目は、データの分断です。一人ひとりのお客様とendto-endでつながり、新規ビジネスの開発や効率的な営業活動を実現するのが理想ですが、事業部の組織を超えてデータを有効活用できない状況でした。