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JO1、BE:FIRSTが次に打つべき施策は? ビルボードデータで読み解くファンダムのアクティビティ

両ファンダムのアクティビティの違いから見る音楽シーン

 次に、YOASOBIとSixTONESの各指標における月次獲得ポイントの推移を比較します。半期ごとの占有率からでは把握できなかった両タイプのファンダムのアクティビティの相違がこのグラフから明らかになります。

【図3】YOASOBIの各指標月次獲得ポイントの推移
【図3】YOASOBIの各指標月次獲得ポイントの推移(クリックすると拡大します)
【図4】SixTONESの各指標月次獲得ポイントの推移
【図4】SixTONESの各指標月次獲得ポイントの推移(クリックすると拡大します)

 まず、YOASOBIを例に挙げた楽曲起因型ファンダムを持つアーティストタイプは、STRM、DL、MVでコンスタントにポイントを獲得し、リリースタイミングにおけるピークが分かりにくくなっています。対して、SixTONESを例としたアーティスト起因型ファンダムを持つアーティストタイプは、リリースタイミングにおけるピークが明確で、CDとLUで大半のポイントを積み上げていることが分かります。

 なおSixTONESについては、今年度上半期にMVがCDとLUの2指標を上回っていますが、3月と6月にリリースされたシングル『共鳴』『わたし』に対する、CDポイントの計算係数変更(21年12月に実施)によるもので、係数を変更しなければ21年のシングルリリース時とほぼ変わらないCDとLUポイントを獲得したと考えられます。

 このように、両者をそれぞれ野球で例えるならば、楽曲起因型ファンダムアーティストは“ヒット量産型”で、アーティスト起因型ファンダムアーティストは“ホームラン型”といえます。

 どちらのタイプが優れているか、一概に決めることはできませんし、それこそヒットやホームランの“飛距離”によっても異なります。それでも、楽曲あたりの単価という観点では、デジタル(STRM、DL、STRM)のほうがフィジカル(CD)よりも安価ですが、デジタルマーケットが拡大を続ける今日において、2020年代の国内音楽シーンは、安価でもコンスタントにファンを獲得しデジタルでの安定した収益を上げる楽曲起因型ファンダムを持つアーティストが、フィジカルの複数購入を促し顧客単価を上げるアーティスト起因型ファンダムを持つアーティストに拮抗しつつあるといえます。

 もうひとつ、付け加えるべきポイントは、両タイプの共通点としてMV指標でポイントをコンスタントに獲得している点です。ジャニーズ系アーティストは昨年前半まで、動画ストリーミングについて散発的な解禁に留まっていましたが、昨年後半より配信が本格化し、例えばYouTubeとTikTokを組み合わせて継続的な楽曲視聴を促すマーケティングが成功しています。

 動画を起点としたマーケティングは今日ではベーシックともいえる手法ですが、音楽に親和性が高いTikTokがシェアを広げることで、新たなヒットが生まれやすい環境が整ってきました。それによって、両タイプ共に新たなアーティストが多く登場し、新規顧客の増加や音楽マーケットの活性化につながっています。

オーディション番組出身アーティストのファンダムを分析する

 『PRODUCE 101 JAPAN』からはJO1、『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』はINI、『Nizi Project』はNiziU、『THE FIRST』はBE:FIRSTと、オーディション番組、言い換えればデビューサバイバル番組出身グループが多くデビューを果たし、そのグループのファンダムが活発化しています。

 理由としてサバイバルという形式からアーティストに強く共感する視聴者が多く、そのままコアファンからファンダムの中核となり、顧客増大促進にアドバンテージが得られる点が考えられます。

 これらのアーティストは前に述べたアーティストタイプとしてはどのように分類され、ファンダム構成に差異はあるのでしょうか。まず、JO1(図5)とBE:FIRST(図6)の各指標占有率をみてみましょう。

 今年度上半期において、JO1はTW39.17%、STRM35.97%、CD11.38%、MV6.48%と続きます。まず目を引くTWの高い占有率は、ファンダムによるSNSサポートが大量かつ継続的に行われていることを示します。STRMのほうがCDよりも占有率が高いですが、その傾向は21年下半期より起きていることなので、ここではアーティストタイプの選別は保留します。

【図5】JO1の各指標占有率の推移
【図5】JO1の各指標占有率の推移(クリックすると拡大します)

 BE:FIRSTはJO1ほどTWの占有率は高くなく、多くを占めるのはSTRMの52.26%で、MV15.71%、次がTWでその次がDL9.08%と、デジタル3指標が大半を占めています。このことから、YOASOBIと同じ、楽曲起因型ファンダムを持つアーティストタイプであることが分かります。

【図6】BE:FIRSTの各指標占有率の推移
【図6】BE:FIRSTの各指標占有率の推移(クリックすると拡大します)

 続いて各指標の月次推移を見ます。

 図7のJO1を見ると、TWポイントの継続的な獲得が目を引くものの、シングルリリース時に大きくポイントを積み上げるアーティスト起因型ファンダムのタイプであることが分かります。かつ、昨年後半よりSTRMポイントが継続的に伸びるようになってきて、楽曲起因型ファンダム混交の兆候が見えてきました。

【図7】JO1の各指標の月次推移
【図7】JO1の各指標の月次推移(クリックすると拡大します)

 図8のBE:FIRSTは、先述の通りSTRMポイントがCDポイントを上回り、楽曲起因型ファンダムの傾向がありますが、シングルリリース時にSTRMポイントもピークとなっていることから、リリースに左右されずにSTRMポイントをコンスタントに挙げることができる、YOASOBIのような強固なファンダムの状況には至っていないと見られます。

【図8】BE:FIRSTの各指標の月次推移
【図8】BE:FIRSTの各指標の月次推移(クリックすると拡大します)

 これらから、両アーティストとも、ステータスの違いこそありますが、ファンダムの活性化は維持されている一方で、STRM指標の継続性を維持するために、新規顧客獲得施策を実施しファンダムを拡大することが必要であることが分かります。

次のページ
ファンダムのアクティビティから検討できる施策とは?

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この記事の著者

礒崎 誠二(イソザキ セイジ)

株式会社阪神コンテンツリンク ビルボード事業部長 ビルボード総研グループ担当部長
東京外国語大学スペイン語学科卒。92年キティ・エンタープライズ入社、同年クラブチッタ川崎に出向、ライヴ制作、招聘業務等を行う。96年退社後、原盤制作、著作権管理、商品流通管理等、多岐の業務に携わる。06年阪神コンテンツリンク入社後、ビルボー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2022/07/07 08:00 https://markezine.jp/article/detail/39345

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