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イベントレポート

鹿毛康司さんが語る「心の奥に触るマーケティング」

1人を喜ばせられないのに、マスを喜ばせられるわけがない

鹿毛:ブランドは、世の中の人に知ってもらって初めて存在できるものです。メールやパッケージなど、様々な媒介物を通じてブランドステートメントを表現しなければなりません。

講演資料より抜粋
講演資料より抜粋

鹿毛:これは、ケラーが提唱したブランド体系図です。パフォーマンス(特徴)は工場で作られるもの。特徴を伝えるために、セイリエンス(顕現性)、フィーリング(感覚)、イメジャリー(表象)そしてレゾナンス(共鳴)を形作っていきます。商品の中ではなく、消費者の頭の中に形作ることで、ブランドが確立し価値を生むのです。

 私はずっと「商品の特徴からコミュニケーションを設計するだけでは歯が立たない」と考えていました。そのようなコミュニケーションでは消費者の体験が考慮されておらず、情緒のつながりが希薄だからです。

 人は合理的判断をする生き物ではなく、潜在意識と顕在意識のあわいで考えている。だからマーケターは「お客様の潜在意識にあるものは何なのか」を考え続け、カスタマージャーニーを描きます。自分がお客様になったり、お客様にヒアリングしたりすることを繰り返すうち、自分たちの勝手な思い込みに気付くことができるのです。「このお客様だったらどうするか」を愛情込めて考えると、足りない点や改善点が見えてきます。お客様に教えてもらいながら、ブランドを強くしていくんですね。

 「喜ばせるのはたった1人のお客様でいいのか」と思う方がいるかもしれません。それでいいんです。1人のお客様が喜べば、他の人たちも集まってきます。1人を喜ばせられないマーケターが、マスを喜ばせられるわけはないのです。

人の心を動かすためには、愛が必要

鹿毛:最後に、心とソーシャルについて話します。西川貴教さんが主催する「イナズマロック フェス」で、私はTwitterにあるツイートを投稿しました。

鹿毛:このツイートのインプレッションは18万、メディアの再生数は14万8,000でした。拡散させるために特別なことをしたわけでもなく、自然と広がっていったのです。拡散のハブとなってくれた人は、西川貴教さんのファンでありながら1人の看護師さんでもあり、企業に勤める会社員でもあり、飲み屋のママでもある。しかしながら、彼らをSTP分析すると「西川貴教ファン」の一言で片づけられてしまいます。違和感を覚えませんか。

 自社のファンと密なコミュニケーションを図る「ファンベースマーケティング」という考え方は、もっと広がっても良いと思っています。ファンというのは、1つのペルソナです。ファンを喜ばさない限り、企業活動は良くならない気がします。

 糸井重里さんの著書『思えば、孤独は美しい。』(ほぼ日)に、こんな一節があります。

「こころ」というものなどない。
そういう考え方があってもいいと思うけれど、
「こころ」というものはある、としておかないと、
なんにも見えなくなってしまうんだよ。
だって、ほとんどの人間が「こころ」で動いているからさ。
「こころってものが。あるんだ」と、
まずそこだけは共通の理解にしたい。

 心はあります。そして「心を動かすために愛は必要だ」ということがみなさんに伝わっていたら嬉しく思います。どうもありがとうございました。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/08/17 07:00 https://markezine.jp/article/detail/39367

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