組織開発のポイントは「分け過ぎないこと」
富永:よくある話と言えば、全然関係のない担当者が御意見番のように意思決定プロセスに関わっていることがありませんか。

徳重:ありますね。長く働いている人の意見が通りやすかったり、担当者の個人的な人間関係によって意思決定が左右されたり。そうしたクライアントの人間関係をRPGのごとく渡りながら進んでいくところにも組織営業の面白さがあります。
富永:インフォーマル(非公式)なネットワークの形成によって予期できない影響力が醸成される事態を、人事の立場ではどのように受け止めますか。
永島:「願わくはそうなってほしい」というのが私個人の考えです。10人集まって3や4の力しか出せない組織もあれば、20や30、40の力を発揮する組織もあります。ここが組織開発の腕の見せどころであり、面白いところなんです。人数以上の力を生むために大切なのは、組織を分け過ぎないことと、階層をできるだけ少なくすること。意図的に組織を崩したり、横串のプロジェクトを増やしたりすると、人の成長が自ずと促されるのです。
分断や敵対を生まないためのノウハウ
富永:今のお話を聞いて、昔参加した社内研修を思い出しました。2チームに分かれてあるゲームに取り組んだのですが、講師から「このゲームの目的はより高い得点を獲ることです」と言われてスタートしたんです。相手チームを出し抜く戦略を巡らせたところ、私のチームが勝利。すると講師に「このゲームは2チームが協調した方が高い点を獲得できるのに、なぜ勝手に対抗しているのですか?」と言われてハッとしました。
AとBに分けられた途端「あいつら」と「俺たち」のような分断が生まれ、敵対心が生まれてしまうことがわかった印象深いエピソードです。人事ではこのような組織の壁をいかに溶かしていくかが課題になると思うのですが、永島さんはどう取り組まれていますか。
永島:有効なのはやはり配置転換でしょうか。店舗など顧客接点に近い現場で働くうちに「組織の壁なんて言っていられない」という危機感を持つはずです。
富永:視点を社内組織からマーケットへ強制的に向けさせるということですね。徳重さんはいかがですか。
徳重:当社では外部の測定ツールを利用し、全従業員が自身の特性や強みを5つの因子で把握できるようにしています。全従業員が測定を受けているので、5因子は社内で共通言語化されているんです。チームパフォーマンス向上のため、メンバーに許可を得た上で各人の診断結果をチーム内で共有し、メンバー間の相互理解につなげています。お互いを理解し合えていると関係性が向上し、生産性も上がるという考えです。
富永:仲が良くない人がいても、関係をより悪化させないために有効な取り組みかもしれませんね。
