※本記事は、2022年8月25日刊行の定期誌『MarkeZine』80号に掲載したものです。
七転び八起きで苦労した創業時代
——ベースフードは2016年の創業以来ファンを増やし続け、2022年2月には月間の定期購入者数が10万人を突破したというリリースを拝見しました。ここに至るまで、どのような軌跡があったのでしょうか。
よく「順調に成長してきた」と言われるのですが、実際は試行錯誤、七転び八起きの連続でした。そもそもスタートアップ企業が食品を作ること、そしてそれをネットで販売すること自体前例がありませんし、まして完全栄養食の市場もなかったからです。
ベースフードの主力製品である完全栄養の主食に関しては、私自身の経験から「栄養バランスが良い主食が作れないか」と考え、独立して開発に取り組んできたことから始まります。一般に理想的な食事とは「1つの栄養に偏らずバランスを良く摂取すること」「多品目摂ること」と言われていますが、一人暮らしの方はもちろん、共働きの方も忙しく、なかなか摂れません。そこで、毎日の主食が栄養たっぷりでしかもバランス良いものであれば、理想的な食事が手軽にとれるのではと考えたんです。
2016年に創業してから1年間はまず商品開発に取り組み、販売を開始したのは2017年です。以来、商品の味をよりおいしく、バリエーションも増やしてきました。定期購入のお客様を中心に、最近はコンビニでも取り扱いをしていただいています。
顧客にとってのベースフードの便益とは?
——今でこそ「完全栄養食」は認知が進み、市場が形成されていますが、この新市場を開拓するにあたりどのような課題がありましたか?
完全栄養食とは何かという問いの前に、「そもそも完全栄養食は自分にとって何がいいのか」という便益の問題があります。これはかなり大切なポイントで、顧客にとっての便益をずっと考え続け、伸ばし続けてきた結果、完全栄養食というカテゴリーが受け入れられたと考えています。
——なるほど。創業当初の顧客にとっての「ベースフード商品の便益」とは何だったのでしょうか。
実は初期のお客様には、新しいものが好きという方も多くいました。ベースフードの最初の製品はパスタなのですが、そもそも「最新テクノロジーで作られたパスタ」というもの自体に高い関心があったわけです。新しいものや新発明が好きという方々にとっては、必ずしも健康という便益は重要ではありませんでした。
ただ、完全栄養食という新しい概念に興味を抱く方々もたくさんいました。そのときの説明としては、「自分にとってどの栄養素が不足しているのか、ご自身でもわからないですよね。なのでサプリメントで補おうと思っても、どのサプリを摂ったらいいのかわからないわけです」「自分で料理するつもりでメニューを決めても、どの栄養素や食材が不足しているかわからないと買い物でも困りますよね」と説明したんです。これはもともと私自身の体験なんですけどね。
キャンプ初心者の方が、必要アイテムを一つひとつそろえていっても、実際にキャンプに行ったら「あれも買っておけばよかった」「これが不足していた」という事態が発生します。そのとき、とりあえずこれ1つ買っておけば役に立つという初心者用セットがあれば、多くの方はそれを買うでしょう。
それと同じで、専門の栄養知識がなくても簡単にバランス良く栄養が摂れますというのは大変便利です。しかも、筋トレに励んでいる人やダイエット中の人とも親和性が高い。そういう様々なお客様に対し、どう役立つのかを考えて売上を伸ばしてきました。