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リゾームマーケティングの時代

メタバース普及の鍵を握るコピー技術、そして、ネオ・ヒューマンの人権が課題になる【前編】


大量生産・大量消費の社会は、コピーありき

 著作権(Copyright)に話を戻すと、出版だけではなく、新聞・放送業界、ネット業界、あるいは、広告業界など、メディアビジネスなら著作権に関わる。著作権によって、オリジナルではなくて、コピーを合法的にバラまく。コピーをまるでホンモノのように扱って、消費者に現実として受け入れてもらう。

 オリジナルが「市場に出回る」ことは厳密には不可能だ。オリジナルが一点しかないなら、それは市場に出回ることはできない。つまり、同じものが、あっちのコンビニにもこっちのスーパーにもある(市場に出回る)なんてことはない。価値の高いものであればあるほど、どこかの美術館・博物館、あるいは、コレクターの邸宅などに保管される。

 ところが、コピーはオリジナルと違って、「市場に出回る」。どちらかといえば、「市場に出回る」ことを目的に、合法・違法を問わず、コピーを生産する。これは、貨幣であれ、自動車であれ、家電であれ、出版物やその他のメディアであれ、基本的には同じだ。大量生産・大量消費の社会、コピー無くしてあり得ない。

 さらに、デジタル技術によってコピーは容易になった。音楽業界がわかりやすい。アナログのレコードがCDになり、iTunes・Apple Musicへと進化した。コピーが容易になった事実を説明する必要はないだろう。

コピーできないマネタイズポイント

 だが、その技術が、オリジナルの著作権者に有利に働くとは限らない。

「アイドルは儲からなくなった。彼ら/彼女らの主力商品は間違いなく楽曲販売である。洗練された情報技術が、楽曲をコピーするコストをほぼゼロにまで押し下げ、しかも劣化しないコピーまで編み出した。」(出典:『メタバースとは何か~ネット上の「もう一つの世界」~ (光文社新書)』岡嶋 裕史著

 そこで、オリジナルの価値を発揮しやすい新しいビジネスモデルが必要になる。コピーに対抗するオリジナルの存在意義をファンが理解しなければ、商売にならないのだ。

「握手はコピーできない。コピー可能なもの、特にデジタル技術でコピー可能なものは、あっという間にオリジナルと同じ品質のものがタダ同然で流通してしまうので商売にならない。だから、コピーできない要素を探し、商品化しなければならないが、握手はそれに最適である。」(出典:『メタバースとは何か~ネット上の「もう一つの世界」~ (光文社新書)』岡嶋 裕史著

 アイドルがグループ化し握手会イベントを行うのは、CDに代わるマネタイズポイントが必要だからだ。そのためには、手数が多い方がいい。これこそが、48人のグループが流通する理由だ。

 「価値観の多様化が48人のアイドルグループを生んだ」という人もいるが、「価値観の多様化」は、私の知る限り、1980年代から(デジタル以前から)言われていたことであって、21世紀に特徴的な事象ではない。たとえば、博報堂生活総合研究所は1985年、このような価値観の多様化を「分衆」と定義している(出典:『「分衆」の誕生―ニューピープルをつかむ市場戦略とは』)。

 コピーできないマネタイズポイント。それがビジネス的な握手会の本質である。しかし、この握手会をさらに脅かすのが、メタバースの本意である。

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メタバースが脅かすマネタイズポイント

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/09/09 20:50 https://markezine.jp/article/detail/39795

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