※本記事は、2022年9月25日刊行の定期誌『MarkeZine』81号に掲載したものです。
王者のP&Gを引き離すAmazon
図表1は、AdAgeが毎年発表する米国市場の広告出稿ランキングの2021年版だ。
背景色が白の企業はCPGや物販などの「(手に取れる)商品の事業」を主とする企業とし、青色の企業は「オンライン上の(手に取れない)サービス」を主とする企業として塗り分けた。
2021年米国での出稿額が「ダントツ」「兆円超え」の1位が「Amazon」である。米国の広告出稿額の王者といえば「P&G」で、年間の規模感は4,000〜5,000億円という認識だった。今やAmazonは「その倍」の年間1.3兆円規模(104億ドル)の広告費で2位以下を圧倒的に引き離している。P&G自身も6,600億円(51億ドル)を投資しているので、筆者の規模感は間違っていなかったが、それを超えるムーブメントが現れている。
同じランキングを2014年当時(7年前、図表2)と比較してみれば、事業内容の入れ替わりが見える。2014年当時は「商品ありの事業=白組」と「(オンライン)サービス=青組」との比率は「12:8」だった。これが2021年には「7:13」に逆転している。
「白組」の代表格として、5〜7年前の上位には必ず多くの自動車メーカーが入っていた。図表2の「3位:GM」「6位:Ford」「8位:Chrysler+Fiat」「11位:Toyota」といった具合だ。日本の広告会社でも「トヨタの電通」「日産の博報堂」のような大手営業局が常に大きな広告扱い予算を持っていたのを思い出す。
2021年に「白組」として残ったのは「P&G」「Walmart」「L’Oréal」「GM」「Samsung」の5社で、ここに「LVMH」「Nestlé」がリスト入りして合計7社。筆者はこれらを「軽い側のデータ」企業として紹介している。
一方の「青組」企業の分野例として、「コンテンツ配信(CTV)広告」「モバイル/ブロードバンド回線提供」などの軽いデータ側だけでなく、「クレジットカード決済」「オンラインバンキング」「保険」といった重いデータ側が増えている。単なる順位変化だけでなく、広告投下量の圧倒的な「量(マグマ)」の増大もうかがえる。