処方箋1「エバーグリーンを目指す」
両氏は前述の症候群から抜け出し、顧客や営業から「ありがとう」と言ってもらえる高品質なコンテンツを作る上での3つのポイントを紹介。谷風氏はこれらのポイントを“処方箋”と表現する。
1つ目の処方箋は「エバーグリーンを目指す」。エバーグリーン(ever green)とは日本語で「いつまでも緑であり続け、枯れることのない常緑樹」のことであり、ここでは「長期間、顧客に自社の価値を訴求し続けるコンテンツ」を意味する。対義語として谷風氏は「トレンドフォロー」を挙げ「DX」や「AI」などビジネスの世界における一過性のトレンドに依存しながら「短期間で自社の認知度を上げるためのコンテンツ」と定義する。
「エバーグリーンコンテンツの魅力は、一度作っておけば『このコンテンツは役に立つ』と感謝してくれる顧客を獲得し続けてくれることにある」と谷風氏。さらに谷風氏によると、エバーグリーンコンテンツでつながった顧客は「会社や商材の価値に共感してくれる顧客」であり、トレンドワードに惹かれてつながった顧客とは熱量が違う。また、コンテンツをWeb上でいつでも閲覧可能な状態にしておけば、恒常的にその成果を確認し続けられるため、デジタルマーケティングとも相性が良いという。
エバーグリーンとトレンドフォローの活用例
会社や商材によって、コンテンツ全体に占めるエバーグリーンとトレンドフォローの割合は様々だ。谷風氏と松井氏は、両社が提供するコンテンツを例に、割合の違いについて解説する。
「ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズが提供するコンサルティングサービスは『顧客の戦略立案や業務改革を支援する』という非常に抽象度の高いサービスですが、サービスの中身や価値の本質は10年前も今も大きく変わりません。そのため、当社のコンテンツはエバーグリーンがほとんどです。YouTubeでさえもエバーグリーンです」(谷風氏)
一方「Adobe Marketo Engage」など先進的なマーケティングツールを提供しているアドビではエバーグリーンとトレンドフォロー両方のコンテンツを提供。トレンドフォローの代表例としては「Adobe Summit」がある。年に1回、旬な情報や最新の技術トレンドなどをツールのアップデート情報と絡めて届けるイベントだ。
「ただ、全体を見ると当社もエバーグリーンのコンテンツが多いと言えます。たとえば2015年頃に作った『マーケティングオートメーション入門ガイド』(ebook)は、今でも多くの方にダウンロードされています」(松井氏)