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マーケティングモデルの基本解説

【第3回】消費者起点のマーケティング戦略――11のパーセプションから感情的な繋がりを創る

パーセプションの多様化で、消費者との繋がりを最大化

 前回取り上げたAppleやスターバックスも、初めから複数の消費価値で、強いパーセプションを形成していたわけではありません。繰り返しになりますが、どのような商品やサービスでも、まずは明確な提供価値を確立し、その要素で強いパーセプションを形成することが出発点です。その後、提供価値を拡張し、消費者が認識する価値を多様化することが商品やサービスの持続的な成長に繋がっていきます。

 これは、ジェニー・ロマニウク&バイロン・シャープが『How Brands Grow Part2(邦訳:ブランディングの科学[新市場開拓篇])2015年』 で提唱しているカテゴリー・エントリー・ポイント(CEP)の視点とも整合します。CEPとは、何かを購入しようと思ったときの選択肢の中で、ブランドを想起するきっかけを指す概念です。競合他社と比較してCEPの数が多いほど、様々な購買機会で選ばれる機会が増え、市場占有率(マーケットシェア)の高さに繋がるとされています。

 つまり、パーセプションの多様化とは、消費者の消費行動の中で自社の商品やサービスが選択肢に入るように、消費者との感情的な繋がりを創るプロセスだと言えます。接点の数が多ければ多いほど、競合他社より商品やサービスの選択確率を高めることができ、多くの消費者から選ばれる基盤になります

消費者起点のマーケティング戦略

 消費価値フレームワークは、消費者理解の見取り図であり、商品やサービスの価値を提案する道しるべとして活用できます。消費者が認識する価値を起点に、マーケティングを実践するためのポイントを整理します。

1.商品・サービスの提供価値を「消費価値フレームワーク」をもとに分解して洗い出す

2.消費価値を起点に、価値の提案内容(コンセプト・メッセージ)を精査する

3.消費者調査で「提供価値」と「購入意向(NPIなど※)」の関連を調べ、優先順位をつける

4.調査結果を踏まえ、自社の商品・サービスの勝ち筋(WHO・WHAT)を見出す

 これらのステップで見出した勝ち筋を実行することで、消費者との感情的な繋がりを創りやすくなります。さらに、定期的な消費者調査を通じて、想定のブランドポジションを獲得できているか、さらに強化すべき価値はないか、といった視点も「消費価値フレームワーク」を用いて把握することができます。商品やサービスに対して、消費者が認識した価値はブランドエクイティそのものであり、現状を適切に把握することは、今後のマーケティング戦略の一助になるでしょう。

※NPI(Next Purchase Intention:次回購買意向)とは、M-Forceが開発したブランド選好指標。次回の購買意向または利用意向を表す概念。一般的に使用される、認知・好意・満足・推奨意向(NPS)といったブランド評価指標と比較して、マーケットシェアの指標と強い相関を示すことが明らかになっている。マーケットシェア拡大に有効な新しいKPIとして活用が期待されている。

最後に

 全3回にわたって、パーセプションの概念からそのメカニズム、そして消費者が認識する価値について解説してきました。これまでの解説で、パーセプションを起点にマーケティングをデザインすることの重要性をご理解いただけたでしょうか。モノが溢れた市場の中で、自社の商品やサービスを選んでもらうには、価値を認識してもらうことが前提になります。消費者は多様であり、価値観やニーズも人それぞれです。消費者の心を動かすには、消費者心理の理解が大切です。

 今回紹介した「消費価値」は、多くの物事にあてはまる価値の側面を抽出したものです。消費者が認識する11の価値(WHAT)を体系的に理解することは、ターゲット(WHO)に伝えるべき価値(WHAT)を見つけ出すヒントになるはずです。WHO・WHATの解像度を高めるツールとして、一人でも多くのマーケターの皆様にお役に立てれば幸いです。

■消費価値と広告評価に関する調査
調査主体:マクロミル
調査方法:インターネットリサーチ
調査地域:全国
調査対象:15歳以上(中学生を除く)~69歳以下
サンプルサイズ:10,000
割付条件:性別・年代(5歳刻み)・エリアをネット利用人口構成比率に基づきに割付
調査時期:2020年2月

■分析手順
1.文献調査により、11のパーセプションに関する測定項目を設定
2.探索的因子分析により測定項目の削減を実施し、確証的因子分析を用いてモデルの妥当性を評価
3.因子得点を分位処理することで複数集団に分割し、価値観の高・低グループを抽出
4.グループ間のデモグラフィック変数、商材カテゴリ利用経験・カテゴリ関与などの共変量を、傾向スコアを用いたウェイティング(IPW)により調整した上で集計

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この記事の著者

安野 将央(ヤスノ マサヒロ)

株式会社マクロミル

シニアマネージャー/マーケティングサイエンティスト

 

大学卒業後、D2C企業にてデータベースマーケティングに従事。新規顧客の獲得からリピート顧客育成まで、LTV(顧客生涯価値)をベースとした顧客分析でPDCAマネジメントを担当。マクロミル入社後は、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/09/28 07:00 https://markezine.jp/article/detail/40112

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